視点

安価で便利な在宅医療サービスを

2003/02/17 16:41

週刊BCN 2003年02月17日vol.978掲載

 ブロードバンド常時接続サービスの普及が急速に進んでいる。IP電話サービスもそれほど時間をかけずに普及に向かうのではないだろうか。こういった安価な常時接続サービスが一般化した結果、パソコンや多機能電話機が若年層の道具から、主婦層などを取り込んで各家庭での一般的な道具となりつつある。利用者は、このインフラを活用した多様なサービスの拡大に寛容なマーケットを構築していく。しかし、この寛容さは雑然とした情報の氾濫や、思いつきだけの品揃えを許容するわけではない。実生活に密着した利便性の高いサービスを、自らのニーズに従って選択していく。

 在宅医療は、ニーズの高いサービス分野のひとつと言えるだろう。在宅医療には、在宅治療といった予後サービスと、健康維持を目的とした予防サービスの2つがある。この2つの分野は一見異なるようにも見えるが、実際は一体化したサービス分野である。普通の人の人生の99%は病気ではない期間であり、病気はこの病気ではない時から始まった何らかの原因の蓄積の結果である場合が多い。

 アメリカでは、1973年に始まった「ヘルシーピープル」プロジェクトが4期目を向かえ「ヘルシーピープル2010」がスタートした。このプロジェクトの結果、心臓疾患の原因とされる脂質の摂取量は、70年代の50%から現在は33%にまで下がっている。ヨーロッパでは、国民の検診データの集約管理によって、より適切な健康状態維持を図ることを目的とした個人向けの総合的なサービスがスタートしている。日本においては、「健康日本21」プロジェクトがスタートした。目的の第一は、欧米人に比べて日本人の罹患率が非常に高いとされる糖尿病予防である。

 予防から予後までを一貫した医療サービスとして実現していくには、安価でかつ便利な在宅医療サービスを欠かすことができない。日常的な健康状態の把握、生活指導、個人検診情報管理、異常の早期発見、早期治療、治療状況管理、適切な情報提供、家庭医・主治医・専門医とのコミュニケーションなどが居ながらにして、容易に活用できるサービスの早期整備、実現が望まれる。

 ネットワークインフラができあがりつつある今、これをより生活に密着したサービスとして育てていくために知識を集約し、家庭や個人を核としたサービスの質の充実に努めなければならない。
  • 1