Japan STOCK

新興市場の株価上昇 ワコム、イーディーコントライブ人気化

2003/05/26 16:04

週刊BCN 2003年05月26日vol.991掲載

大型株を避ける投資家

 ベンチャー企業を中心にした新興市場の株価上昇が目立っている。年初からの株価指数の騰落率を見ると、日経平均が5月16日までで5.4%の下落なのに対して、ジャスダック市場(店頭市場)の動きを示すジャスダック平均は7.1%の上昇になっている。

 年金基金の運用対象になっている東証1部の大型株には「代行返上」にともなう売りが続いているほか、ここにきて1ドル=115円台に上昇した。円高が輸出ハイテク株には逆風に働いている。これが日経平均がなかなか底値圏を脱出できない要因。上値の重たい大型株を避けて個人投資家や一部の機関投資家の資金は代行返上の売りが出る懸念がない東証1部の小型株や新興市場に向かっている。ジャスダック平均だけでなく、TOPIX(東証株価指数)の規模別株価指数の小型株や東証2部指数も年初の水準と比較してプラスになっている。日経平均の動きだけ見ていると東京市場は厳しい下落だが、小型株には値上りしている銘柄が多く、好パフォーマンスを享受している個人投資家も少なくない。

 新興市場での物色の流れには、(1)最近新規上場した銘柄(2)テーマに乗る人気株(3)ジャスダック市場の代表的銘柄――の3つがある。

 (1)では、コンピュータ入力機器やソフトの開発・販売を行うワコム(4月25日にジャスダック)が1か月足らずで株価2倍以上、CD-ROM不正コピー防止技術のイーディーコントライブ(5月1日に東証マザーズ)は70%超の上昇と人気化。ともに公募価格の水準が低めで過熱感なく初値を形成したことがその後の上昇につながったほか、5、6月は季節的に新規上場銘柄の数が減少することで特定の銘柄に人気が集中する傾向が強い。今年5月のIPO(株式新規公開)はそのイーディーコントライブと、情報企画(30日に東証マザーズ、金融機関向けシステムの開発)の2社のみ(4月は12社)。6月は5月16日発表分までで4社のIPOが予定されている。

 (2)では、日本風力開発(東証マザーズ)が「港湾内、国有林などにおける風力発電の解禁」を手掛かりに急騰。また、バイオテクノロジーのベンチャー企業では初の上場(昨年末)として話題になったアンジェスMGが人気化した。

 (3)は、株式に流動性がある代表的な企業、ビジネスモデルを確立して成長軌道に乗っている企業を買う流れ。

 ジャスダック市場では時価総額が大きく、業績も安定している銘柄で構成(現在はヤフー、楽天、OBC、アルゼ、インデックスなど52銘柄)する株価指数「J-ストックインデックス」を算出しているが、年初からの上昇率は実に23%。新興市場の代表銘柄を買う動きが活発なことを裏付けている。 ヤフーはそうした流れと業績拡大を背景に、株価は4月末には150万円台と3月の安値から倍増(3月末の1対2株式分割を考慮)した。(有賀勝久)
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