中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>27.中国ビジネスのリスク (5)中国人の気質を知る

2003/07/14 20:43

週刊BCN 2003年07月14日vol.998掲載

 前々号から中国ビジネスに関わるリスクとして人の問題を取り上げてきたが、これほど奥が深い問題はないだろう。中国ビジネスに携わる人が必ずもらすのは、「中国人と付き合うのは難しい」ということだ。文化・慣習の違う海外で人を雇い使うことは何かしら困難さをともなうものだが、特に中国人を管理するのは簡単にいかないとされる。それはなぜだろうか。(坂口正憲)

 管理する日本人を悩ませるものとしてよく指摘されるのは、中国人の徹底した“個人主義”である。「個人の生活が第一で、仕事に対する責任感が日本とは違う」、「自己主張が強く、他人と連携するチームプレーが苦手」などの話は枚挙に暇がない。ソフト開発は、どんどん短納期、低コストに向かっている。そのためエンジニア1人当たりの作業負荷は大きい。納期が迫ってくれば、徹夜続きになるケースも多い。また、複雑化した現在のソフト開発では、作業工程をこまかく細分化したチーム開発が一般的である。つまり、ソフト開発では個人の生活をある程度は犠牲にし、他人と協調して仕事を進めなければならない。一般的な中国人の苦手とするところだろう。

 ただ、これはあくまでも一般論である。中国人というだけで一面的に見るべきではない。中国に進出する日系企業の経営者はこう話す。「中国は世代間で労働に対する価値観がガラリと変わってきている。40代、30代、20代でそれぞれに特徴がある」。日本でも世代間で価値観にギャップがあるが、政治・経済の枠組がこの10年で急変した中国でのそれとは比べようがない。

 筆者が知る限りでも、文化大革命後の混乱期(1970年代から80年代前半にかけて)に青年時代を迎えた40代は、いわゆる個人主義の色合いが濃い。だが、80年代後半からの経済改革の息吹を青年時代に感じてきた30代、経済発展を目の当たりにして育った20代は、明らかに40代とは労働に対する価値観が違う。前出の経営者は、「20代の社員は成果主義の下で良く働くし、日本的な労働慣習への順応力もある」という。中国は大きく変貌しており、そこでは人の価値観も日本以上に変化している。
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