中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>28.中国ビジネスのオポチュニティ (1)オープン化の流れ

2003/07/21 20:43

週刊BCN 2003年07月21日vol.999掲載

 前号までは、日本のソフト会社が中国ビジネスを手掛ける場合のリスクを取り上げてきた。今号からは逆にオポチュニティについて考えてみたい。言うまでもなく、リスクとオポチュニティは表裏一体の関係ではあるが、今号からは“可能性”の方をクローズアップしてみる。(坂口正憲)

 先日、ある銀行のIT戦略を取材したところ、担当者から意外な言葉が出てきた。「次期システムの基盤はLinuxとオラクルで構築する」。その銀行は営業店系、勘定系を含めてTCP/IPベースのネットワーク上にウィンドウズとIAサーバーでシステム基盤を構築するという積極的なオープン化路線で知られるが、次期システムではさらに先を行くのだ。その銀行は、自己資本比率20%の安定した財務体質を背景に高収益を誇る。その要因は、オープン系のITを果敢に取り入れることで、全体の運営コストを抑えているからだ。低収益に悩む日本の金融機関からすれば、1つのモデルになっている。その意味で、金融機関が再生する条件の1つとして、情報システムのオープン化は避けられない。

 何が言いたいかといえば、今後は金融機関を筆頭にオープン化の流れが加速するということだ。メインフレームからUNIXを飛び越し、一気にウィンドウズやLinuxへのダウンサイジングが進む可能性がある。何しろ、最も厳しい可用性を求める金融機関ですら、ウィンドウズやLinuxを使い始めているのである。そして、その際にはかなりの技術者不足、というよりも需給のミスマッチが起きる可能性が高い。前出の銀行担当者は、「日本にはLinuxの技術者が圧倒的に不足している」ともらす。「ウィンドウズやLinuxでミッションクリティカルなシステムを開発・運用できる技術者の数は、国内にそう多くない」(今中能夫・コメルツ証券シニアアナリスト)のが現状だ。

 その点、1990年代に入りソフト産業が立ち上がってきた中国には、オープン系の技術者が豊富だ。前出の銀行もインドや中国から人材を招き入れ、オープン系のシステム開発力を補っている。オープン化の急速な流れに備える方策の1つとして、“中国”という選択肢を検討してみる価値はあるだろう。
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