OVER VIEW

<OVER VIEW>長引くIT不況の国内ハイテク決算総括 Chapter9

2003/07/28 16:18

週刊BCN 2003年07月28日vol.1000掲載

 有力ハードベンダー系列でない独立系IHV、ISV決算も国内IT市場の低迷によって、明と暗に分かれている。IHVではメモリ、ストレージなどを主力とするメルコ、アイ・オー・データ機器などが好調であるのに対し、パソコン、サーバーなどシステムを手掛けるソーテック、ぷらっとホームは厳しい決算となった。ISVではジャストシステムを除くと順調といえる決算だった。しかし、ソフトベンダーでも製品ではなく、サポートやコンサルティングに軸足を移さなければならない時代が到来したと指摘できるだろう。(中野英嗣)

独立系IHV、ISVの2003年3月期決算

■周辺機器は好調、システムは大不振のIHV

photo IHV(独立系ハードベンダー)では、メモリ、周辺機器が主体のメルコ、アイ・オー・データ機器は売上高を大きく伸ばした。これに対しソーテック、ぷらっとフォームのシステムベンダーはいずれも売上高が大きく減少し、すべての損益が赤字となった(Figure49)。

 メルコの03年3月期売上高は前年度比25%増、874億円となり、売上総利益率も13.3%となった。これに対し販管費も前年度より3%削減したため、営業利益も前年度の7億円弱から、39億円へと大きく伸びた。これによって経常利益も前年度の8億円から41億円と5倍となった。

photo 02年12月のアイ・オー・データ機器の6か月決算では売上高が前年同期比20%増、売上総利益率も同5%から12%と大きく伸び、これによって営業損益も前年同期の赤字19億円から5億円の黒字と損益は24億円と大きく改善された。

 低価格パソコン製造販売が主体のソーテックは、パソコン市場縮小に大きく影響される決算となった。ソーテックは02年3月期より売上高が大きく落ち込んでおり、03年3月期決算売上高も前年度比28%減となった。さらにソーテックの決算を悪化させている要因は総利益率が前年度の9%から、6%弱へと大きく低下していることだ。これによって総利益額は前年度比56%減という極めて大きな落ち込みとなった。

 同社は経営環境の厳しさから販管費を30%も削減したが、総利益減少幅を補填することはできず、営業赤字も47億円となり、事業の抜本的見直しが求められる。

 ぷらっとフォームは創業以来UNIX、Linux関連商品を提供している。ぷらっとフォームの決算も厳しく、03年3月期売上高は前年度の61億から9%減の56億円となった。このように売上高が減少するなか、同社販管費は増えたため、営業赤字も売上高比20%となった。

photo 売上高が伸びているメルコ、アイ・オー・データ機器の製品別売上高を見ると、両社はともにメモリ、ストレージが大きく伸びている(Figure50、51)。

 メモリ売上高はメルコで34%増、アイ・オー・データ機器で31%増だ。ストレージはメルコで30%増、アイ・オー・データ機器で12%増である。これについて同社はメモリはパソコンでは苦戦するが、デジタルカメラなどのメモリカードの数量、売上高が大きく伸びたと説明する。

■大苦戦続くジャストシステム、アクセスは大幅売上増

 外資系オラクルを加えた国内の代表的ISV(独立系ソフトベンダー)決算では、相変わらずジャストシステムの苦戦が目立つ。

 売上高ではオラクルが微減だったが、オービックビジネスコンサルタント(OBC)、PCA、アクセスは売上高を大きく伸ばした(Figure52)。

photo オラクルの総利益は14%減となったが、販管費も10%減だったので、売上高営業利益率30%を確保した。OBCは売上高・総利益とも10%伸張で、突出して高い81%の売上総利益率を維持した。

 ジャスト売上高は前年度比23%減となり、これにともなって総利益も25%減少した。しかし前年度比販管費削減が16%にとどまったため、売上総利益率と販管費率の大きな逆転となり、売上高営業損失率は10%強となった。

 PCA決算は相変わらず順調である。前年度比で売上高は7%増、総利益は12%増となったため営業利益も16%増である。アクセス(単独)はモバイル機器用ブラウザソフトが順調に伸びたため、売上高は22%増、営業損益も前年の若干の赤字6000万円から5億円近い黒字に転換した。これによって経常、税引前、最終のすべての損益もすべて黒字となった。

■総利益率が低下した日本オラクル、サポート関連の比率は高まる

photo わが国ISVで、経常指標が米マイクロソフトに最も近いのは売上高が124億円のOBCだ。総利益率はマイクロソフト、OBCともに81%で、売上高販管費率、営業利益率もほぼ同じだ。日本オラクルの経営指標は米本社とほぼ同じだ。しかし日本オラクルの総利益率が前年度の61%から53%と大きく下がったため、同社経営指標は米マイクロソフト、OBCと大きな格差が出た(Figure53)。

 PCAの総利益率も73%と高い。やっと黒字に転換したアクセス総利益率は65%だが、売上高が十分大きくなっていないため、販管費との差、営業利益率は8%弱にとどまった。

 ジャストシステムは売上高の大幅減少に見合った販管費削減が進んでいないため、売上高販管費率が74%と極めて高くなり、大きな営業赤字となっている。

 ジャストを除くわが国のISVは順調に業績を伸ばしているといえるだろう。しかしIT業界全体のビジネスの変革、即ちハードやソフトの商品売上高が需要低迷、価格デフレによって大きく縮小するなか、サービスやコンサルティングは順調に伸びていることが、IHV、ISVの決算からも読み取れる。

 メルコやアイ・オー・データ機器はパソコンメモリの大幅価格低下を補完するデジカメ用メモリカードなどの需要増をうまく把えている。

photo これに対しIHVのソーテックやぷらっとホームはパソコンやサーバーのシステム販売主体のビジネスを大きく変えられないため、赤字が大きくなっている。ハードだけでなく、ソフトベンダーでもビジネス環境が大きく変化していることを示すのが、日本オラクルの部門別売上高の推移だ(Figure54)。

 日本オラクルの主力ソフト商品データベース売上高は、日本IBMなどとの競合が激しくなったこともあって、ピークの02年5月比で34%も減少した。これに対しサポートサービスは同50%、コンサルティングサービスも同70%以上伸びている。

 この結果、01年の日本オラクル売上高に占めるデータベース、ERP「E-Busines Suite」などを合算したプロダクト売上比65%は、03年5月には47%まで低下した。これに対しサポート、エデュケーション、コンサルティングを合算したサービス比率は01年5月の35%から、53%と比重を大きく高めた。

 ハードベンダーだけでなく、ソフトベンダーもビジネスモデルの変革が求められる時代となった。
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