中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>33.中国政府が狙う2匹のドジョウ

2003/09/01 20:43

週刊BCN 2003年09月01日vol.1004掲載

 2003年8月は、マイクロソフトにとって呪われたような1か月だった。世界的に「MS Blaster(ブラスター)」が猛威をふるった。日本でも膨大な数の一般ユーザーが感染被害を受け、企業・団体では、NECや日本郵政公社での集団感染が報告された。中国での詳しい感染状況はわからないが、中国にいる筆者の知人も何人かが感染していることから、被害は小さかったと思われる。ただ、政府系機関で働く知人は、「職場のパソコンはLinuxで動いているので問題なかった。家庭のパソコンは感染してしまったが…」と話していた。(坂口正憲)

 中国政府は行政事務の電子化にLinuxを推奨している。「オープンソースのLinuxは、コスト面、セキュリティ面で他のOSより優れている」としている。実際に導入しているのは、政府が支援するレッドフラグ・ソフトウェアの製品だ。日本でも電子政府でのオープンソース採用が検討されているが、中国政府は実際に導入を始めている。中国国家郵政局や対外貿易経済合作部など中央官庁から、北京市人民政府のような地方自治体までLinuxベースのパソコンを利用している。

 そして、Blasterワームが猛威をふるっていた8月中旬、タイミングを測ったかのように中国政府は、政府系機関が今後購入するOSとオフィス製品は国産品に限定すると発表した。実質、ウィンドウズとMSオフィスを排除し、レッドフラッグのOSと金山公司の「WPS Office 2003」を導入していくのだ。従来も3分の1は国産品購入を義務づけていたが、これからは100%となる。

 中国を成長市場と見なして、積極的に直接投資してきたマイクロソフトにとっては裏切られた気持ちだろう。この2月には、ビル・ゲイツ会長自らが訪中し、同社の政府向けソースコード開示プログラムを中国政府に提案、調印もしている。ただ、これでマイクロソフトの対中投資が冷えることはないだろう。逆に加熱する可能性がある。中国の一般市場では依然、同社は圧倒的シェアを持つ。これを手放すわけにはいかない。中国政府は人為的に市場に競争原理を持ち込み、自国産業育成と投資呼び込みという2匹のドジョウを狙っているようだ。
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