多様化するセキュリティビジネス 各社の戦略を追う

<多様化するセキュリティビジネス 各社の戦略を追う>5.富士通(下)

2003/09/08 20:43

週刊BCN 2003年09月08日vol.1005掲載

 富士通のセキュリティビジネスは、アウトソーシング事業本部セキュリティサービス統括部が司令塔だ。セキュリティのソリューション体系の策定や、不正アクセス監視のアウトソーシングサービスの提供などがメインのビジネスだ。案件は、業種・業務別の営業部門、システムエンジニア(SE)部門が個別に対応しており、セキュリティサービス統括部が営業担当者やSEの支援を行う。

不正アクセス監視が強み

■全国主要都市にサービス拠点配置

 荒金善裕・アウトソーシング事業本部長代理兼セキュリティサービス統括部長は、「作り手と売り手の連携を取りやすい環境を整えた」と、現在のセキュリティサービスを提供する体制に自信を見せる。

 不正アクセス監視のアウトソーシングサービスも富士通の強みだ。サービス拠点の中核となる「ITマネジメントセンター」は、館林システムセンター(群馬県)と明石システムセンター(兵庫県)内のほか、東京都の3か所。東京の拠点については、「セキュリティ保持のため、場所を公表していない」(富士通)。さらに、全国の主要都市を中心に、約1000か所にサービス拠点を配置。約1万人の選任技術者で24時間365日のサポート体制を構築。3種類のサービスメニューを用意しており、中小企業のニーズにも対応して、安価なサービスもソリューションメニューに揃えている。

 同社のセキュリティビジネスは、インテグレーションや関連サービスも含めて、2002年度は売上高610億円で、01年度に比べ約35%増と好調。今年度については売上高720億円を目標に掲げる。不正アクセス対策などの「インフラ」、電子認証などの「アプリケーション」、セキュリティマネジメントの「組織規定」と、製品・サービス群を3つのレイヤーに分けているが、主力は「インフラ」で、全体の約60%を占めている。

 荒金事業本部長代理、「セキュリティ市場は今後インフラ回りの需要が一巡し、アプリケーションへとニーズが移行していく」と予測。具体的には、電子文書保全や、ICチップを利用したセキュリティカード、生体認証関連の製品・サービスが注目されると見込んでいる。「今は需要が小さいが、今後は政府や大手企業だけに限らず、中小企業や家庭まで浸透していく。実需にはすぐにつながらないが、製品開発には今から力を入れて取り組んでいく」と、「アプリケーション」関連の製品・サービスの拡充を急ぐ方針だ。
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