WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第170回 米SMB、ERP導入進む

2003/09/22 16:04

週刊BCN 2003年09月22日vol.1007掲載

 米国ではERP(統合基幹業務システム)は中堅・大企業だけが導入し、年商1000万ドル(12億円)以下の小企業で導入するところは皆無であった。わが国では、旧オフコン有力ベンダーがSMB(中小企業)向けERPパッケージをもち、着実に普及し始めている。米国ではこれまでSMB向け有力ERPも見当たらなかったが、中堅・大企業IT投資が削減されている現在、SAP、マイクロソフトは、SMBがこれからERPの金鉱だと把えている。SAPなどは従来のERP廉価版を開発し、マイクロソフトは買収したソフト会社所有ソリューションをベースにMSブランドのERPを開発し、近々リリースする。

模索する販売ノウハウ

 特に製造業SMBは、取引先大企業のSCM(サプライチェーンマネジメント)に組み込まれるため、自社アプリケーションの統合が急務となり、ERP導入を迫られているという事情もある。また、これまで米SMBではインテュイットの会計パッケージ「Quick Book」などが普及しているが、このパッケージの発展性に疑問をもつSMB経営者も多い。特に製造業SMBのERPでは、経営や会計営業情報との統合だけでなく、生産管理、工場在庫・仕掛り、物流、そしてeコマースまでのインテグレーションが要求される。SMB対象の米ソリューションプロバイダ(SP)の多くは、これまでERP販売経験がないため、中堅・大企業向けERP販売手法をそのまま持ち込んで、失注するケースや、獲注しても後のシステム開発がコスト倒れになって巨額赤字に陥るところも多い。そのため「中小SP向けのERP販売セミナー」も活況を呈している。

 これらセミナーでは、「ERPパッケージのもつフル機能をSMB経営者にデモしてはならない。見込み客個有のERP導入目的を十分絞り込んだうえ、商談を進めよ」とERP販売ノウハウを教示している。SMBへERP導入を成功したSPは、これからこのパッケージをベースに、同一顧客から長期間システム案件が次々と発生する動きに期待している。

 ERPパッケージでは統合領域拡大がどのように行えるかが重要であることを、中小SPは経験し始めている。ERPのワークフローは複雑であるため、パッケージの「使い勝手」もERP選定重要ポイントであることも、SPは気づき始めた。またERPを導入すると、以降はこれを基盤にしてIT予算が決定されるので、ERPでは導入の第1段階が極めて重要であることも経験している。

 「これまでソフト市場で強力だったソフトベンダーが、ERP市場では、真にSPの味方になるかどうかは別問題だ」と、ソロモンスミス・バーニーのアナリスト、ダン・ヨーク氏は分析する。さらにヨーク氏はERPパッケージ選択時のSPへのアドバイスをする。「ERPはアプリケーション統合が複雑であり、将来の統合領域も広い。従ってERPベンダーのSPに対するボリュームマージン率、リベート制以外にもSPとの協業ルールやSP支援要員の量質、SPトレーニング制度も選択時の重要ポイントになる」(中野英嗣●文)

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