変貌する大手メーカーの販売・流通網

<変貌する大手メーカーの販売・流通網>第1回 NEC 数年かけスリム化図る

2003/11/03 20:42

週刊BCN 2003年11月03日vol.1013掲載

 IT不況が続くなか、ようやく回復の兆しが見えてきたパソコン販売。しかし、大手ハードメーカーは、生産拠点の海外移転、部材調達コストの削減、販売・流通網の再編と、あらゆる手を尽くして生き残りを図る。特に流通網は1990年代から大きく様変わりしている。そこで当連載では、大手メーカーの流通網を取材し、各社の取り組みを紹介していく。(毎月1回掲載)
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 NECの販売体制は、この数年で大きく変化している。法人向けでは、昨年5月にサーバーとクライアントの販売窓口を統合。コンシューマ向けでは分社化した専門会社によってチャネル状況を掌握できる体制を整えた。これによって、販売ロスのない効率良い販売体制を整えていく。外資系ベンダーに比べ全国に数多くの販売パートナーをもつ特性を生かし、きめ細かいサービスをユーザーに提供していく。(三浦優子●取材/文)

支援体制の厚さで海外メーカーと差別化

■開発から販売まで、一貫した体制

 日本のパソコン産業黎明期、NECのパソコン事業は他社に先駆けて販売チャネルを構築した。これがトップシェア獲得の要因の1つと言われている。

 しかしここ数年、同社では過去の販売体制を一新し、新たな体制作りを進めてきた。

 コンシューマ向けでは、2001年10月に開発と生産を担当するNECカスタムテクニカ、マーケティングと販売を担当するNECカスタマックスをそれぞれ設立。販売は別会社のNECパーソナルシステム、マーケティングはNEC本体というそれまでの体制を、マーケティングまで含め別会社で行うようにした。

 その後、03年7月1日付で、NECカスタムテクニカとNECカスタマックスを合併し、NECパーソナルプロダクツを設立。コンシューマ事業については、マーケティングから、開発、生産、販売まで一貫して行う体制が整った。

 NECパーソナルプロダクツの片山徹社長は、「01年にNECカスタマックスとNECカスタムテクニカが誕生した時に、今のような製販一体の体制に集約しようという議論はあった。だが、製造子会社が01年時点で4社あり、企業文化が異なる会社を1つにするのが難しかった。そこでまず2社体制にすることにした」と話す。

 NECパーソナルプロダクツの誕生で、基本的には販売店との間に卸業者は介さず、直接商品を届ける体制になった。

 現在では主要販売店のほとんどが卸しを介さず直接NECパーソナルプロダクツと取り引きを行ない、一部の販売店が、ダイワボウ情報システム、大塚商会、三谷商事、サンテクといった卸し事業者を介して商品を得ている。

 NECパーソナルプロダクツが販売店との直接取り引きを推進しているのは、サプライチェーンマネージメント(SCM)を活用し、販売数と製造数の差をできるだけなくすことを目指しているからだ。卸しなどの中間流通がはさまることで、市場滞留在庫の数が増え、商品の値崩れ、売れ残り商品の増加といった事態を招きやすくなる。

 NECのパソコン事業は、他社に先駆けてた全国販売網の構築でトップシェアを獲得した。この販売網の広さがマイナスに働いたことから、01年、03年に販売体制を整理統合したのである。

■クライアントとサーバー支援を1つに

 企業向けの販売パートナー支援体制は、02年5月に再編された。それ以前は、クライアントとサーバーは同じNEC内でも別々の支援部隊が担当していた。しかし、販売パートナーから、「クライアントからサーバーまで1つの窓口で注文できた方が利便性が高い」という声が挙がり、クライアントからサーバーまで1つの事業部が販売パートナーを支援する体制にした。

 ある大手販売パートナーは、「これまでは、複数の部門がパソコンとサーバーに関わっていたために、新しい仕掛けをNECのどこに持ちかければよいのかが分かりにくかった。昨年5月の体制一新で窓口が1つになったため、利便性も高く、NEC自身の機動力も上がった」と話す。また、体制変更と同時に製品価格を引き下げた。これは、低価格を武器に、外資系メーカーがシェアを伸ばしていることを牽制する狙いがあった。

 元々国産メーカーは、価格を高めに設定し、販売パートナーとエンドユーザーの折衝で、ある程度価格を引き下げる仕組みをとってきた。しかし、外資系メーカーが最初から低価格で商品を販売。これに対抗するためには、国産メーカーも最初から低価格で製品を販売する必要に迫られたのである。

■販売パートナーのサポートも充実

 販売チャネルの整理、製品の低価格化など、外資系メーカーに近づいてきたNECだが、「大きく違う」とアピールするのが販売パートナーの支援体制の充実である。

 昨年冬からは、「販売パートナーのSE(システムエンジニア)の能力が高くなれば、メーカーの売り上げも伸びる」として、販売パートナーの人材育成サポートプログラムを構築。販売パートナーの中には、「SEの技術的な人材育成については、NEC側に任せていきたいと考えている」(大塚孝一・日本事務器社長)という声が挙がるくらい、サポートには力を入れている。

 これは、「販売パートナー支援は難しいというメーカーもあるようだが、当社はあくまで販売パートナー支援を重要なポイントと考えている」(細谷豊造・NECパートナービジネス営業事業本部長)という方針から。

 チャネル体制自身は、かなりシンプルなものとなっているが、販売パートナー支援体制については他社にない手厚さで行っていくというのがNECの販売体制の特徴といえるだろう。

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「変貌する大手メーカーの販売・流通網」の第2回は12月1日号(Vol.1017)で掲載します。
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