中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>43.留学生を生かすキャリアパス

2003/11/10 20:43

週刊BCN 2003年11月10日vol.1014掲載

 前号では、NECソフトが中国企業へ外注した開発プロジェクトで失敗した原因が、基本的なマネジメントの欠如だったのではないかと指摘した。特に発注側にノウハウの蓄積が少ない新技術を駆使した開発で、プロジェクトマネジメント(PM)が機能していなければ、暗闇を手探りで歩くようなものだ。(坂口正憲)

 もちろん、中国企業へ開発をアウトソーシングする場合、このPMが一番難しいと言われる。まず、「日本人マネジャーが、現地の技術者とコミュニケーションを取るのは本当に難しい」(オフショア開発を手掛ける中堅ソフト会社)点がある。相手がどの国の人間であろうと、日本語を母国語としない相手へ、ソフト開発での微妙なニュアンスを伝えるのは相当に困難である。

 そのために「ブリッジSE」と呼ばれる、日本語が堪能で日本のビジネス習慣にも慣れた中国人SE(システムエンジニア)が間に立つ。取材で知り合ったブリッジSEの中には、日中を行き来しながら、日本のクライアント企業と単独で交渉し、システムの仕様固めから中国の現地スタッフのマネジメントまでを一貫して担当。納期・品質の責任を一手に請け負うスゴ腕もいる。そうしたブリッジSEの多くが日本の学校を卒業し、そのまま日本のソフト会社に就職。経験を積んでいることが多い。そう最近、何かと社会で話題となる“中国人留学生”である。

 先頃、神奈川県知事が選挙の立会演説で、「中国人留学生は全員コソ泥だ」と発言したとのニュースがあった(同知事は後に訂正)。この連載では政治的な事柄に触れるのは控えてきたが、1回だけ考えを述べておきたい。日本の中国人留学生で犯罪に身を染める者が少なくないのは、残念ながら事実だ。日本語学校の在り方や留学生の受け入れ体制を見直す必要があるだろう。ただ一方で、留学生から日本企業に就職。日本のビジネス社会で経験を積んでから本国に戻り、日中の企業の橋渡し役を務める若者も確実に増えている。本当に向学心の高い中国の若者が、日本で就学・就職できるキャリアパスが定着してくれば、日中間のビジネスはもっと円滑になるだろう。
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