変貌する大手メーカーの販売・流通網

<変貌する大手メーカーの販売・流通網>第2回 富士通 パートナー支援策を体系化へ

2003/12/01 20:42

週刊BCN 2003年12月01日vol.1017掲載

 富士通は、企業向け販売パートナー支援策の体系化づくりを今年に入り本格的に開始した。従来以上にパートナーを「メインプレイヤー」に成長させ、同社の強みである地域性やソフト・サービス製品を融合させた展開を強化する考えだ。パートナーを通じ「ハードウェアとソフトウェア一体戦略」(長野佳久・経営執行役)を強固なものにする。コンシューマ向け販売でも、販売店向け「本部商談」を強化してタイムリーに商材を投入する戦略が奏功し始めている。(谷畑良胤●取材/文)

「ハード・ソフト一体戦略」を強固に

■パートナー700社の支援組織を新設

 富士通は10月1日、同社の強みである地域に根ざした企業向け「ソフト・サービス事業」を強化するため、本社に全国の「富士通パートナー」約700社を支援する150人体制の「中堅市場ビジネス本部」を新設した。「従来以上にパートナーを当社のメインプレイヤーに成長させる」(堀切達也・中堅市場ビジネス本部本部長代理)のが目的で、7月に発表した従来のパートナー向け支援策を再構築・体系化した「ソリューションバリュープログラム」に厚みをもたせる作業を急ぐなど、パートナー戦略を本格化させている。

 このプログラムではまず、同社が提唱するミドルウェアやOSなど共通化したプラットフォームのIT基盤「トリオーレ」上に、パートナー各社の業種パッケージやオリジナルサービスなどを組み合わせた「セット商品化」を推進する。そのために共通の「コアソリューション」としては、中堅ERP(基幹業務システム)ソリューション「グロービア-C」や中堅企業のシステムインテグレーションを本格的にウェブ展開するための「ウェブサーブ業種ソリューション」のほか、保守・運用サービスの「サポートデスク」、業種別のシステム導入ソリューションを体系化して提供する。

■システム評価やIT投資診断も

 富士通パートナーには、全国展開する富士通ビジネスシステムズ(FJB)や都築電気、大興電子、内田洋行、富士電機総設、扶桑電通、ミツイワ、ソレキアなどのほか、特定地域に強みをもつ行政システム九州(九州地区)やさくらケーシーエス(神戸市)、大崎コンピュータ(千葉県)などがプレーヤーとして加盟する。

 富士通はこれらパートナー約700社向けに「SAT/Lite(ソリューションアドバイザリーツール)」と呼ばれるシステム構築の上流工程の基本的なシステム導入コンサルテーションを支援するツールを基に、以前までショールームの役割を果たしていた全国45か所の「ソリューションステージ」から、パートナー支援部隊である富士通SE(システムエンジニア)を派遣。システム導入について顧客先でパートナーと一緒にヒアリングする。

 堀切本部長代理は、「このサポートでは、導入後のシステム評価やIT投資診断なども行う」と、従来以上に手厚い支援策が講じられる予定。あるパートナー企業の幹部は、「今回のパートナー支援策は、連続性があり局面がはっきりして、わかりやすくなった」と、反応は上々のようだ。

 また、自前のパッケージやアプリケーションを保有するパートナーや同社のSE子会社の製品と富士通の「コアソリューション」を組み合わせ新たなソフトの流通促進を図る「ソリューションディストリビューションセンター(SDC)」のテコ入れも始めた。5年前から実施しているプログラムだが、さらに充実を図る。

 SDCに登録しているアプリケーションは約1000種。ここからは、富士通の「グロービア-C」とアマノのタイムレコーダを組み合わせた人事・給与パッケージなどが“全国区”の製品として流通。堀切本部長代理は「昨年から、セミナーの開催を増やすなど、SDCの強化を本格化した。パートナー同士でオリジナル製品を作る場を支援し、“全国区”の新製品を多く輩出し当社ソリューションを効率良く融合させる」(堀切本部長代理)と話す。

■販売店向けに本部商談を強化

 コンシューマ向けパソコン販売では、富士通グループのパーソナル機器販売部門が統合して1997年7月に誕生した「富士通パーソナルズ(FJP)」が、パソコン専門店や家電量販店への直販施策を一手に預かる。富士通本体の商品企画部も、従来はデスクトップとノートに分けていたが、4月からは「顧客視点」「スピード対応」を強化するため、個人向けを「コンシューマPC推進部」、企業向けを「クライアントPC推進部」に組織再編した。

 販売店向けの戦略では、販売店網が広域化しているため、昨年から、全国の店舗を広域に掌握する各販売店の本部への商談を強化した。「地域に目を光らせる本部と交渉して魅力ある商材をタイムリーに出荷できる」(佐藤俊彦・パーソナルマーケティング統括部オープンチャネル支援部長兼販売店営業部長)という。

 地域のFJP部隊は、販売店の各店舗への営業を強化して、POSデータなどを基に、客層や季節に合った商材の出荷時期などを“本部商談部隊”に知らせることで、市場滞留在庫の数を減らすことに成功した。このため、「在庫負担の軽減と実売状況の把握で、他社より1-2週間早く新機種の投入に結びつき、販売台数を伸ばすことにつながった」(佐藤部長)ようだ。

 FJPは、企業向け流通や販売、営業、システム構築のノウハウを持つ「オープンチャネル」と呼ぶ独立系の大手販社、地域の販社を通じて、パソコンとサーバーを販売している。佐藤部長は、「これらのルートも中堅・中小市場を開拓する上で重要であり、全国の富士通営業部門とFJPが連携してチャネルサポートやソリューションなどの提案を行って行く」と、大手販社などのルートも中堅・中小市場を開拓する上で重要視する。

 ここへきて、富士通の販売パートナー支援体制はきちんと体系化された印象だ。
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