テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>24.IT実感社会への道標

2004/01/19 16:18

週刊BCN 2004年01月19日vol.1023掲載

 電子政府の構築に向けて業務・システム最適化計画(エンタープライズアーキテクチャー=EA)を策定する作業が今月から本格的にスタートした。昨年末までにEA策定のための環境整備がほぼ完了。来月中にも最初の成果として内部管理業務のうち人事・給与関係業務のEAが策定される見通しで、IT化に対応した行政の業務改革がいよいよ動き出した。(ジャーナリスト 千葉利宏)

EA策定作業スタート 動き出した行政の業務改革

 昨年7月にe-Japan戦略IIとともに決定された「電子政府構築計画」では、「利用者本位の行政サービスの提供」と「予算効率の高い簡素な政府」を実現するとの目標が掲げられ、EA導入が決まった。この方針に基づいて2005年度までの3年計画で、(1)政府全体の業務・システムの洗い出し・整理、(2)EAの策定、(3)システムの設計・開発、(4)新しい業務・システムへの移行一が進められており、ちょうど(1)のフェーズが昨年末まででほぼ終了した段階だ。

 これまでの動きを整理すると、まずEA策定を支援するため全府省への配置が決まっていた外部専門家「CIO(各府省情報化統括責任者)補佐官」の任命が終わり、昨年12月26日にCIO連絡会議の下に「CIO補佐官等連絡会議」が設置された。予算面では、通常の単年度予算ではなく、EA策定からシステム設計・開発までの全体をカバーできる"モデル予算"が導入されることになり、EAづくりのための人とカネが一通り揃ったことになる。

 これに合わせてEA策定の統一的実施手順となる「EA策定ガイドライン」が12月25日、経済産業省の「ITアソシエイト協議会報告」で公表された。EAに関する初の日本語テキストであり、国はもちろん、地方自治体や民間でも利用できるよう考慮して作成されている。EAを「組織全体の業務とシステムを統一的な手法でモデル化し、業務とシステムを同時に改善することを目的とした、組織の設計・管理手法」と定義づけ、EAの策定手順や管理・評価方法を示している。

 ここで重要となるのが、EAを策定するときの"共通辞書"となる「参照モデル(RM)」。使える技術やデータ構造、業務のタイプなどを収集・整理したもので、全府省が同じRMを使うことで業務・システム全体の整合性が確保されることになる。RMには技術、データ、政策・業務など5種類があり「3月末までに策定する予定。ガイドラインも半年から1年後をメドに改訂したい」(村上敬亮・経産省商務情報政策局情報政策課課長補佐)と、継続的にブラッシュアップしていく考えだ。

 政府の業務・システムの全体像を整理した「業務・システム一覧」も、12月26日にCIO連絡会議から公表された。国民等向け行政サービスを公共資産管理、社会活動の支援、公衆衛生など23に、内部管理業務も人事・給与、調整、会計など6に大きく業務分類し、人事院や公正取引委員会を含む20の府省ごとにシステムの導入状況がまとめられ、重複などが一覧できる。これに基づいて担当府省を決めて各業務・システムのEA策定が順次スタートするわけだ。

 すでに先行している人事・給与業務について、官房業務等改革WGから「EA策定の基本的方向」が同じ日に公表された。新しい人事・給与情報システムの導入によって年間20億円の経費削減、延べ約1300万時間の業務処理時間短縮が見込まれるとしており、2月中にも、より具体的な内容を盛り込んだEAが策定される見通し。すでに民間企業ではlTを使って内部管理業務の徹底的な合理化・効率化が進んでいるだけに、最初のEAにどのような具体的な効果を盛り込めるかが注目される。

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