WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第192回 MS戦略への不満が突破口

2004/03/01 16:04

週刊BCN 2004年03月01日vol.1029掲載

 米国パソコン市場におけるデスクトップLinux市場はまだ極めて小さい。しかし、Linuxディストリビュータ独SuSE(スーゼ)を買収したノベル、そしてレッドハットは、デスクトップLinuxを大市場に成長させると期待する、マイクロソフト戦略の弱点を探し出したと、多くの米ITアナリストはいう。それはマイクロソフトの価格政策に対するホワイトボックスビルダー達の不満である。デルやHPなど巨大パソコンベンダーに対するウィンドウズやマイクロソフト・オフィスの仕切り値と、ホワイトボックスビルダーが仕入れる価格には、長い間大きなギャップがあった。マイクロソフト商品の市場価格は高止まりしたままなので、パソコンにバンドルされたソフトは大きな価格構成比を占めるようになった。

Linux成功の公算は大

 しかも、デルなど大口OEMの仕切りは下がり続けたため、ソフトはデルやHPにとって大きな利益源となった。マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOは就任以来、市場ではパートナーフレンドリーな戦略で評価を高めてきた。しかし、この大口顧客と小口のビルダーとの大きな仕切り格差は若干修正はされたままで長い間放置されてきたと、多くのビルダー経営者はマイクロソフトへの不満を述べる。OSの仕切り差は5年前は50ドル(5500円)程度であったが、今は30ドル(3300円)。またオフィスなどの格差は以前の100ドル(1万1000円)から60ドル(6600円)となったが、数百ドルのパソコンにとっては大きな原価格差だ。マイクロソフトも数値は公表しないものの、格差を認める。しかしデルなど超大口顧客優遇のため、簡単にはビルダー向け仕切りを大幅に下げられない。

 このビルダー達の不満を、デスクトップのLinux参入の大きな突破口にしようとするのが、多くの米国ビルダーとの強い絆を築いてきたノベルである。ノベルの狙いはデスクトップOSを単にLinuxに切り換えるだけではない。ビルダーの多くは、SMB(中堅・中小企業)のシステム構築の実績も大きく、LAN OS初期の頃からノベル製品には手慣れている。このためノベルは準備を着々と進めてきたと同社ジャック・メスマンCEOは次のようにいう。「わが社の強みは長年、デスクトップとサーバーを結ぶソフト技術に携わってきたことだ。この技術をLinuxに生かし、その第1弾製品としてLinuxネットワーキングの『ノベルNetprise Linuxサービス』を発表した。これで多くのホワイトボックスビルダーやネットワーク構築SIerにデスクトップLinuxの牙城を築ける」

 現在米国パソコン市場におけるホワイトボックスシェアはデルと同程度の30%以上といわれている。「従って当市場にLinux橋頭堡を築こうとするノベル戦略は成功する公算が高い」とスーゼ技術責任者、ジェルジェン・ゲック氏はいう。レッドハットもマイクロソフトの価格戦略の弱点を武器に、ウィンドウズ市場への攻撃を仕掛けると予想されている。米国SIerは、Linuxホワイトボックスを歓迎する。(中野英嗣●文)

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