視点

資金に裏付けされたITビジョンを

2004/06/14 16:41

週刊BCN 2004年06月14日vol.1043掲載

 企業から家庭へとデジタル化の波が押し寄せ、それがワイヤレスの方向へと進もうとしている。すでに、パソコンでなくても、携帯電話で大抵のことがこなせるようになってきたし、さらにこれにデジタル家電などが加わってくれば、もはや家庭と企業の間にデジタル装備の格差がなくなり、人々の生活は「テレワーク」、つまりITを利用した場所・時間にとらわれない働き方も可能になってくる。

 こうしたデジタルワールド時代にあって、日本にはもっと世界に誇って良いIP(知的財産)がたくさんある。モノ作りのノウハウもそうだし、映画・アニメ分野でも世界にインパクトを与えている作品は多い。だが、十分にアピールしきれていないのが現状だ。葛飾北斎の画がまず海外で評価を得たように、“本家”日本で十分に評価されていないケースが多い。これらを「ジャパンブランド」として日本の強みにしていく必要があるだろう。

 国のIT戦略にしても、政治的なリーダーシップがもっともっと発揮されても良いのではないだろうか。安心・安全なネットワーク社会を築くには、規制緩和も大事だが、民間よりもむしろ政治がビジョンを明確にし、引っ張って欲しいと感じる。インターネットを活用した遠隔医療などは、安心・安全なネットワークに支えられてこそ成り立つ。つまり、国民の生活にかかわるネット社会の根幹の部分は、やはり政治や役所が最も得意とする分野だと考える。

 加えて、こうした強力なリーダーシップのもとビジョンを実現していくには、もっと“お金”のイメージが前面に押し出されても良いように思える。現在、最先端IT国家の実現に向け進められているe-Japan戦略にしても、例えばこれに10兆円規模という十分な資金的裏付けが示されれば、民間としても元気が出るに違いない。実際、米国のIT産業にしても、軍需、国防政策という資金的な裏付け抜きには成長はあり得ない。

 資金に裏付けされた国全体の戦略が明確になってくると、民間の研究開発にも一挙に集中度が高まり、成果が出てくるであろう。これからのユビキタス時代は、強力なリーダーシップ、新しいビジョンのもと、官民が一体となって協力していくことで、民間企業はグローバルマーケットへの対応で知恵を競い、「ジャパンブランド」により世界という舞台で戦っていけるようになる。
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