拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略

<拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略>第25回 物流サイト運営会社のトラボックス編(2)

2004/10/04 16:18

週刊BCN 2004年10月04日vol.1058掲載

 国内最大級のオンライン物流サイト「Tr@Box.net(トラボックス・ドットネット)」は、1999年11月のサービス開始当初、無料会員制によって会員の獲得に成功した。開始2年後から、会員登録などを一部有料にしたが、現在は「月額有料」と「無料閲覧コーナー」を併設して運用している。自ら運送会社を経営する藤倉泰徳社長は、「できるだけ敷居を低く、使い勝手の良いサイトにしたかった」と、サイト経営者として業績を上げることと、不況に喘ぐ運送会社の実情を考えて折衷案をとったという。

サイトが止まる、でも自前でシステム構築

 トラボックス・ドットネットは99年のサービス開始時、レンタルサーバーを借り運営していた。しかし、わずか数か月で会員が500社以上に膨れ上がり、「1000社を超えたらサイトが止まると専門家から指摘を受けて、自社サーバーを立てた」(トラボックスの岡泰一郎取締役)と話す。00年10月からは、東京都台東区にマンションを借り、その一室に自社サーバー3台を設置している。

 このシステム構築を担当したのは、知り合いを介して懇意になった東京大学で情報工学を専攻する学生。この段階では、システムインテグレータなどプロのITベンダーを利用していない。藤倉社長は、「なんといっても資金がなかった。できるだけ安く仕上げたかった」と、当時を振り返る。00年当時は無料会員制を敷いていた。収入は、サイトのバナー広告のみで、月40-50万円と経営環境は厳しかった。

 トラボックス初の自社サーバーは、この東大生が東京の電気街・秋葉原で購入。選んだのは、ぷらっとホーム(鈴木友康社長)の1台20万円という格安サーバー。「情報量が多いのが当社サイトの特徴。システムを安定稼動させるのが最重要事項だった。でも、IT投資には積極的になれなかった」(岡取締役)と、潤沢な資金を投入できなかった当時を振り返る。

 トラボックスに再び転機が訪れたのは03年夏のこと。東京ビックサイトで開催された物流展示会で、製造業向け受発注支援サイト「NCネットワーク」を運営するエヌシーネットワーク(内原康雄社長)の幹部に出会ってから。以来、同サイトなどに刺激を受けたトラボックスは、さまざまな仕掛けをサイトに施す。現在、運用停止中の従量課金制や与信管理、ネット決裁サービスはその一例だ。

 エヌシーネットワーク幹部は昨年秋、挑戦心に溢れるトラボックスの藤倉社長とマイクロソフトの中堅・中小企業市場担当幹部と引き合わせる。この3社は、「非常にウマが合った」(藤倉社長)という。トラボックスやエヌシーネットワークは、運送会社や製造業がIT化を進めないとサイトが発展しない。マイクロソフトは、パソコンすら置いていない法人が多い運送業界に対するアプローチをしたかった。ここで思惑が一致したのだ。

 昨年11月からこの3社は共同で、運送会社にIT化の必要性を訴える「ITキャラバン」を開始した。(谷畑良胤)
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