個人情報保護法で変わる“IT風景”

<個人情報保護法で変わる“IT風景”>9.地味な既存製品に脚光

2005/04/04 16:04

週刊BCN 2005年04月04日vol.1083掲載

 これまでの号では、個人情報保護法の完全施行にともなって、企業のIT活用にブレーキがかかる面を取りあげてきた。

 もちろん、これは一面的な見方である。IT業界側からは、活用にブレーキをかけられないように、安全かつ柔軟にデータを取り扱えるツールやソリューションを提案してゆけばよい。

 それは何も目新しいものとは限らない。今までそれほど注目されなかった地味なツールやソリューションが存在価値を発揮する場合もあるだろう。

 例えば、市場が縮小均衡だったOAフィルター。これが今、売れに売れているという。「企業から1000枚単位で注文が来ているが、製造元が限られているので生産が追いつかない」(サプライメーカー関係者)そうだ。

 売れているのは、チラツキや紫外線を抑えるOAフィルター本来の機能に加え、画面の視野角を制限して後斜めからの「のぞき見」を防ぐものだ。

 労働安全衛生を考えれば、OAフィルターは業務で使うパソコンに不可欠なものだろう。だが従来、それほど普及していなかった。それが情報漏えい対策という面で脚光を浴びている。

 こんな例もある。ある大手プリンタメーカーは、今春から自社製の印刷管理ソフトをプリンタに同梱していくという。これまで希望するユーザーだけに無償提供していたものだ。

 この印刷管理ソフトは従来、ランニングコスト削減のために、ネット上の各端末の印刷枚数を制限するツールという位置付けだった。使用制限はメーカーにとって痛しかゆし。そのため前面で訴求されていなかった。

 ところが、その印刷管理ソフトは、誰が・いつ・どのデータを印刷したか、印刷履歴を管理する機能も備えている。これまで目立たなかったこの機能が情報漏えい対策に使えると判断した。

「個人情報保護法の影響で印刷を禁止する動きもあるが、管理ソフトを同梱することで安心して使ってもらえるようにする。プリンタはネット共有で印刷履歴を管理しながら使用するべき、という認識を広めていきたい」(メーカー関係者)。

 情報漏えい対策には、地味な既存のツールやソリューションが意外な実効性を持っている場合もありそうだ。(坂口正憲(ジャーナリスト))
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