e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>37.電子自治体のEA事業スタート

2005/05/30 16:18

週刊BCN 2005年05月30日vol.1090掲載

 総務省は、今年度から新たに電子自治体のEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)事業に着手した。福岡県北九州市、埼玉県川口市、岩手県水沢市をモデル団体に選定してEA策定作業を実施し、自治体向けのEAガイドラインや参照モデルなどの環境を整備する。今年3月末で市町村合併も一段落しており、今後はEAによる自治体の業務改革を促進し、都道府県単位の共同アウトソーシングセンターへの移行を後押ししていく。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 地方自治体の情報システムは、自治体ごとにバラバラに開発・導入されてきたが、電子自治体の実現に向けて、総務省ではシステムの共同利用によってIT投資負担の軽減と業務効率の向上が可能な共同アウトソーシングセンター方式の導入を提唱。2002年度から共同センターで利用できるモデルシステムを開発する共同アウトソーシング事業を開始した。03年度にまず基幹となる統合連携システムと文書管理システム、電子申請受付などのフロントシステムを開発。04年度は財務会計、人事給与、庶務事務、公有財産管理など6つの事務支援系システムを開発するなど、着々とモデルシステムの整備を進めている。

 「これまでに市区町村と協議会などを設置した都道府県は46団体、うち具体的に動き出したところは40団体となった」(細田大造・総務省自治政策局自治政策課課長補佐)と、鳥取県を除きシステム共同化に向けた自治体の体制も整ってきた。さらに今年4月1日時点で、岡山県など14都道府県で電子申請汎用受付システムの共同運用を開始したほか、公共事業の電子入札や財務会計など内部管理業務などでも共同運用を開始する自治体が出始めてきた。

 着々と整備が進む共同アウトソーシングセンターをいかに市区町村に利用してもらうか。最大の課題はここにある。これまでは各自治体がそれぞれの業務のやり方に合わせてシステムを構築して利用してきたわけだが、共同センターのシステムを利用するとなると、従来の業務の見直しは避けられないだろう。さらに共同センターの利用によって各自治体では業務効率の改善も求められることになる。業務改革と共同センターへのシステム移行──この2つに市区町村が積極的に取り組むよう支援していくことが不可欠である。

 EAは組織全体を通じた業務の最適化を図る設計手法で、政府も「業務・システム最適化計画策定指針(ガイドライン)」を策定して各府省でEAの策定作業を開始したところ。このEAを市区町村でも策定してもらい、効率的・効果的な電子自治体を推進していくのが総務省の作戦だ。今回のEA事業では、プロジェクトの進ちょく管理を行うPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)に地方自治情報センターがなり、自治体向けEAガイドライン、参照モデルを策定。その下に住民情報、税など基幹業務と人事給与、財務会計など内部業務の2つのEA策定チームを設置して、北九州市(政令指定都市)、川口市(中核市・特例市)、水沢市の規模の異なるモデル団体で実際にEAを策定。その成果をフィードバックして自治体向けガイドライン、参照モデルの第1版をリリースする計画だ。

 共同アウトソーシング事業も、今年度は住民情報関連業務(統括県・高知)、税業務(京都)、福祉業務(岡山)の3つのモデルシステムを開発する計画で、主要業務のモデルシステムがほぼ出揃うことになる。電子自治体の実現に向けては先進自治体とそうでないところの格差拡大が懸念されており、出遅れ挽回に向けて準備をスタートすることが急務となっている。

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