堅調な中国地方の経済に対応すべく、大手ベンダー各社は地域に密着したうえで、より効率的な中国地方のオペレーションを展開するため、ソリューション事業の再編を進めている。いずれも中国地方全域でのナンバーワンを目指すが、重点ターゲットや各県の位置付けは微妙に異なる。(光と影PART IX・特別取材班)

大手ベンダーは子会社再編で地域密着度を高める

■日立、顧客数拡大で基盤固め

photo 日立製作所は、2002年に中国地方の製造・流通、金融分野のシステムエンジニアリング業務を日立中国ソフトウェアに移管。翌03年には、日立製作所の製造・流通分野の営業部門と日立エイチ・ビー・エムの中国地方対応の営業・システムエンジニア(SE)部門も日立中国ソフトウェアに集約し、新たに日立中国ソリューションズとしてスタートさせた。

 日立中国ソリューションズの古林正明社長は、「今年5月に、それまで出向扱いだった製作所やエイチ・ビー・エムの営業・SEが転籍し、中国地方の市場全体の深耕にかかれるようになった」と、意欲を示す。04年度に72社の新規受注を獲得するという実績を挙げたことが自信につながっているようだ。

 「まず、顧客企業の数を増やすことが重要。見積りの精度を高めて赤字が出ない仕組みを、といっても、各社とも苦労している。顧客企業を増やすことが先決」(古林社長)と指摘する。

 具体策としては、地域密着度を高めるための拠点の拡充だ。広島県福山市や岡山県岡山市、島根県松江市、さらに山口県周南市などが当面の候補。現時点では、日立製作所の拠点を利用している格好だが、地域密着を進めるには、日立中国ソリューションズとしての拠点を置くことが不可欠。「できれば年内にも、しっかりした体制を整えたい」(古林社長)意向だ。

 もちろん、体制を整備すれば顧客企業が増えるわけではない。地域密着を実践するには人的戦力の強化も必要になる。幸い、新卒の採用については順調。中途についても、「メーカーや流通などの経験者が移ってきて、自前のシステムを作るようになっている」(古林社長)という。業務知識がなければ、会話が成立しない世界だけに、望ましい循環ができつつあるようだ。また、東京の中小企業を想定した製品では、地方の中小企業にあてはまらない場合もあるので、最近では日立製作所の製品開発にも参加するようになっている。

 一方で、体質改善の必要性も感じている様子。「技術屋の会社だっただけに、SEなどは〝待ち〟の習慣が身についている。エリアや商品体系で区分し、ファーストコンタクトから顧客企業に行かせるようにしなければならない」(古林社長)と指摘する。また、ビジネスのサイクルが長いシステムインテグレーション(SI)型SEと短いソリューション型SEのスピード感を合わせていく必要もあるようだ。

 顧客数拡大をベースに、中国地方での足場を固めるのが当面の目標。「製造・流通分野で受注を獲得し、納品するという当たり前のことだが、そこからオリジナルのパッケージを作っていく。人事・給与システムについてはオリジナルの実績を持つが、他はまだこれから。当面は、日立グループ他社の製品なども担ぎながら、経験を積ませたい」(古林社長)と考えている。

 地方には、人的つながりなど、思わぬ伏兵もある。地場に立脚するには、地場なりの強みを持つ必要があるということだ。

■富士通グループで“ワンカンパニー化”

 富士通中国システムズは04年12月、富士通鳥取システムエンジニアリングと合併するとともに、富士通山口情報を子会社化した。富士通の下島文明・中国営業本部長は、「自治体合併が進んだが、中国5県は先進度でいえばトップレベル。しかし、まだシステムを1つにしただけであり、サービスの向上や本当の意味での効率化投資はこれから」と指摘する。

 富士通中国システムズの藤田栄保社長は、「SEは、パッケージやソリューションといった横展開のノウハウをもっている。昨年の体制変更で、これに営業部隊が乗った。組織としても動きやすくなった。中国地方をワンマーケットと捉えることができるのは大きい」という。

 ターゲットとなるのは、「自治体合併の次のステップと医療。中国地方の医療関係者に電子カルテやレセプト(保険診療報酬請求)の一本化などの考えを持つ人も多い」(下島本部長)。法制上の問題はあるが、金融分野でも先進事例が中国地方に見られるだけに、中国地方での勝負に勝てれば、という思いがあるようだ。

 そのための準備も進めている。富士通山口情報は、中国地方の医療・自治体のソフト開発を専業化する。「山口は、ソフトのEMS(電子機器の受託生産)サービス。リソース管理を一本化し、ノウハウを持つデザイナーがメーカーである山口情報に発注し、製品化する。もちろん、オフショア開発も組み込むが、人件費を下げるのが目的でなく、仕組みとしてコストダウンを図るのが狙い。トータルで開発コストを20%下げる」(藤田社長)という。今年度下期には、オフショア部分も含め、サイクルが機能するようになるが、人民元の切り上げもにらみ、新たなオフショア先も検討中だ。

 一方、デザイナーとなるSEのスキルアップでは、東京オフィスを活用する。大手企業向けの開発を行うため、売上高構成比では50%以上を占める東京での事業だが、利益面での貢献度は高くない。しかし「東京は教育・人材育成の場。山口が活用することになるパーツのほとんども東京で作ったものであり、オリジナル商品も開発」(藤田社長)しており、新しいスキルを積ませる実践の場としては申し分ない。東京を組み込んだローテーションの実施で、全体のスキルアップが可能という。

 自治体と医療以外の民間向けでは、広島県と岡山県に軸足を置く方針。食品産業や造船業などの企業の動きが活発になっているからだ。このため、4月から専門のプロジェクトチームを立ち上げた。富士通岡山システムエンジニアリングとの連携も進み、中国地方の実質的な「ワンカンパニー化」で、フットワークは軽快さを増しているようだ。

 もっとも、中国地方の情報サービス産業がすべて順調ではない。末国博文・中国経済産業局地域経済部参事官も「県によっては情報産業団体の会員企業が減っているところもある」と懸念を示す。大手ベンダーでも「東京と地方では、同じ中小企業でも規模が違う」と指摘する。情報サービス産業の競争は、これからが本番なのかもしれない。