視点

著作権の環境が激変した20年

2005/07/25 16:41

週刊BCN 2005年07月25日vol.1098掲載

 今年は、著作権法にコンピュータプログラムが著作物の例示として明記されてちょうど20年に当たる。また、ACCS会員会社の著作権侵害事件を全国47都道府県全ての警察が対応した年でもある。この記念すべき年、先日の総会では、警察庁をはじめ、兵庫、富山、福岡の各県警の担当官にも参加いただき、会員会社に対して直接、刑事事件の侵害内容の変遷や捜査についてご紹介いただいた。

 私がこの仕事を始めたのは18年前にさかのぼる。当時を思い出すと、まさに隔世の感がある。あの頃の海賊版は、手書きのラベルを貼った5インチのフロッピーディスクで、店舗で売られていたりレンタルされていた。警察の捜査も、パソコン好きの刑事さんの個人的な知識だけに頼っていた。そんな時代だから、全国の警察に出向いて、ぜひ事件として扱って欲しいと頭を下げて回った。

 その後、フロッピーはCDとなり今はインターネットが主役である。また、複製権や貸与権侵害だけでなく、その後、著作権法に規定れた公衆送信権侵害は想像をはるかに超えるのではないか。摘発される側も、業者ではなく一般の人が増えてきた。会員会社も、ゲームとビジネスソフトのメーカーに加え、出版社や映画会社、セキュリティ技術に長けたメーカーなど今では300社を超える。20年の間にあらゆる環境が激変したと言っていい。

 ACCSの業務も変わってきた。刑事事件に関する業務は今も重要な仕事なのだが、昨今は教育や啓発活動にもより力を入れている。著作権侵害をなくすためには、「法」と「教育」と「技術」の3つがバランスよくなければならないと考えているからだ。教育においては、特に学校関係者に対して、著作権だけではなくプライバシーやセキュリティまで範囲を広げた「情報モラル」に力を入れている。

 刑事事件に関連する仕事も教育も、時代に合わせ成果を上げてきたと自負している。そして、これからのACCSの活動は、「情報モラル都市宣言」から始めるコンテンツ創造、情報発信、保護管理を通した地域コミュニティの活性化支援と考えている。文化保護、情報管理、プライバシーなど地域社会や自治体が抱える問題の解決の糸口になるのではないかと思う。詳しくは別の機会に譲るが、著作権を本籍地に、著作権法が謳う文化の健全な発展のため、教育や地域社会の活性化に発言をしていきたい。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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