コンピュータ流通の光と影 PART IX

<コンピュータ流通の光と影 PART IX>拡がれ、日本のソフトウェアビジネス 第17回 鳥取県

2005/08/01 20:42

週刊BCN 2005年08月01日vol.1099掲載

 鳥取県の情報産業に新たな胎動が見られる。行政も、将来へ向けた重要産業として振興の必要性を感じるようになってきた。活性が高まってきたことにより、情報産業のなかからも、新たな方向性を見出そうとする動きが始まっている。(光と影PART IX・特別取材班)

産業構造が変化するなか情報産業のプレゼンス高まる

■「ソフトの地産地消」で情報産業振興へ

photo 鳥取県の情報産業と行政とのつながりは、さほど密接とはいえなかった。山本直生・鳥取県企画部情報政策課企画員も、「つい最近まで、県自身が情報産業関連企業のことを知らなかった」と率直に語る。2004年5月から県庁と鳥取県情報産業協会(情産協)との意見交換会がスタートし、互いの可能性を探るという動きが出始めている。県内の産業基盤は強固ではなく、その産業基盤にも変化の波が押し寄せている。次代を支える産業としての期待が高まってきたところだ。

 もちろん、取り組みとしては早いとはえない。「鳥取は周回遅れのランナー。それを認めたうえで、トップランナーの失敗もしっかりと見て走ればいい」(山本企画員)との考えだ。方向性が定まっているとはいえないが、片山善博知事も提唱する「地産地消」の観点から「ソフトの地産地消」の輪郭が浮かんできている。県発注の案件について、県内企業の参加を容易にするもので、県と情産協との合意は形成されつつある。すぐにというわけではないが、今後、ガイドラインのようなものが示されることになりそうだ。

 一方、情報産業の側でも、それぞれに方向を見出そうとする動きが始まっている。

 システムインテグレータ(SI)や大手ベンダーとぶつからず、なおかつ仕事を自らの手で完結させられる、という観点からインターネットに特化して起業したソンズ(鳥取市、鈴木尊善社長)。鈴木社長は、「インターネット関連でもいろいろなビジネスが登場しているが、お仕着せでなく、あるものをまず使うということを優先すれば、生き残れるのではないか」と考えたという。同社のコンテンツマネジメントシステム「i-SITE(アイ-サイト)ポータル」は、Linuxなど流行のオープンソースではなく、ウィンドウズベースで大規模サイトの構築や運用管理、コンテンツの直接編集も可能。

 「東京なら半製品でもビジネスになるかもしれないが、地方で開発するには商品として完結させ、パッケージ化し、自分たちで売りに行かなくていいもの、また、サポートが必要でないものでないと」(鈴木社長)との思いが込められている。会社全体の売上比率も、現在は県内が8割を占めるが、アイ-サイトポータルにより、県外比率の向上を狙う。その手始めとして、アイ-サイトポータルのASP(アプリケーションの期間貸し)サービスを6月中旬から開始した。「情報更新の頻度が高く、ユーザー数の多いところには最適。今後は当社にはない機能に関する技術などをアライアンスで補い、より製品の完成度を高める」(同)方針だ。

 もっとも、悩みがないわけではない。アライアンスのパートナーとなるような企業は東京に多い。自社の開発力を高めるという点でも、鳥取が最適というわけではない。鈴木社長も「できれば鳥取をベースにしたい」というが、「東京に行くべき」とアドバイスする先輩経営者もいる。「2、3年後には、次のステージを考えるタイミングが来るかもしれない」(同)とみている。

■地元へのコミットメントを高める企業も

 山陰地方の中央部の米子市をベースに、印刷事業からスタートしたエッグ(高下士良社長)は、現在も印刷関連の売り上げがシステム開発関連の売り上げを上回っている。しかし、高下社長は「年内には逆転する」と言い切る。オープンソースの活用による汎用機からの転換などの需要が増えている。また、大手メーカーの部品発注システムをウェブベースに切り替える提案が採用され、関連案件も受注できるようになっているためだ。システム開発部門の強化によって、部門別構成比だけでなく、地域別構成比でも県外の比重を高めることを狙っている。キーワードの1つは、やはり「アライアンス」だ。

 6月には、鳥取市の印刷会社との提携に基本合意した。エッグの獲得した印刷部門の受注を提携先に振り分ける一方で、提携先の営業担当者にシステム開発部門の教育を施す。もちろん、実際の営業活動にはエッグのシステムエンジニア(SE)などが当たるが、企業のニーズの1次情報をより早く収集することに目的がある。「印刷業の営業担当者は顧客企業との接点が多く、有効」(高下社長)との判断だ。今後も地域密着型企業との間でアライアンスの構築を進め、システム開発部門の基盤を強化していく考え。「PDA(携帯情報端末)を用いた看護日誌システムなど、デジタル化に使えるデバイスは数多くあり、ノウハウを持っていれば、新しいシステムも格安にデータ化できる」(同)。そのためには、まず顧客のニーズの1次情報を獲得し、実績を積み上げる、というのが当面の戦略だ。

 地元へのコミットメントを高めることを戦略に置く企業もある。米子市に本社を置く東亜ソフトウェアは、大手ベンダーの受託中心からの事業転換を進めている。「今でも、仕事をして欲しいと言われるが、地元に根差して、信頼され、存在価値のある会社に」とは、同社の山崎正視常務。現在進めている社内改革では、3つの事業部門でそれぞれ一番強い分野を伸ばす戦略。

 パッケージソフトの導入支援を行っていたビジネスサポート事業では、事務・OA機器販売事業者などからの紹介を受け、ITコーディネータ資格者を中心に、より上流工程からコミットしてシステム構築に取り組むようになり、成果を上げてきている。また、受託開発中心だったシステム開発部門は、青果市場の販売管理システムなど、優位性のある分野でのパッケージ化を進めている。これらの事業については、効率性追求の意味から、これまであまり活用していなかった製造工程の外注も検討していく方針だ。

 一方、ネットワーク構築を中心とするシステム技術部門では、地元ケーブルテレビとの連携により、自治体や県の情報ハイウェイの足回りなどの分野で強みを出していく考え。「山陰ではこれからといえるセキュリティ分野についても手がけることを企画」(山崎常務)しており、それぞれの部門で、地元での存在価値を高める計画だ。
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