ユーザー事例 経営がITを変える

<ユーザー事例 経営がITを変える>6.ガードナー

2006/05/15 20:29

週刊BCN 2006年05月15日vol.1137掲載

自ら主体となって開発

地元協同組合と連携

 防塵衣メーカーのガードナー(埼玉県加須市、矢澤將之社長)は、ICタグを活用した防塵衣管理システムを他社に先駆けて実用化した。開発は大手SIerには発注せず、経営コンサルティングなどを手がける地元の協同組合に依頼した。大手の言いなりになるのではなく、自ら主体となって開発を進めるためだ。ITパートナーにはソフトの開発だけでなく、試行錯誤を重ねて仕様を確定するプロセスや共同して課題を解決する取り組みを求めた。お仕着せの「ソリューション」は必要ないと考えたからだ。

 半導体や食品などの工場に設置されたクリーンルームでは、塵や菌の飛散を防止するため防塵衣や無菌衣を着用する。こうした特殊な衣服もクリーニングの回数を重ねるうちに繊維のほつれなどの劣化が進む。今回開発したシステムは防塵衣にICタグを取り付け、クリーニングの回数を記録。規定の回数ごとに抜き取り検査を行って劣化がどこまで進んでいるのかを管理するものだ。劣化していれば新しいものと交換してクリーンルームの品質確保に役立てる。2005年10月に稼働した。

 従来はユーザーが自ら防塵衣を管理するのが主流で、メーカーはつくって売るだけ、クリーニング会社は洗うだけというケースが多かった。大規模なクリーンルームになればなるほど防塵衣の管理に手間がかかり、不満を持つユーザーもあった。今回のシステムはクリーンルームの環境を維持する防塵衣、無菌衣の管理を代行する付加価値サービスとして注目されている。

 システム設計はガードナーとクリーニング会社が共同で行い、IT関連は経営コンサルタントなどを手がける地元の協同組合さいたま総合研究所(さいたま総研、合田正恒理事長)に協力を依頼した。防塵衣などに縫い込んだICタグのデータを異業種間で共有・活用する事例はほとんど前例がない。ITパートナーの選定においては「われわれのアイデアをもとに試行錯誤を重ね、腰を据えて課題を分かち合えるパートナーであるかどうかを重視した」(ガードナーの山本徹・営業管理本部取締役本部長)という。

 ガードナーの生産管理システムなどの基幹業務系システムは、もともとNECや東芝など大手ベンダーに発注するケースが多かった。生産管理などは導入事例が多数あって仕様を固めやすい。だが、今回の案件は前例がほとんどなく、開発と並行して仕様を固めていく手法をとった。出来上がった仕様どおりに開発するのではなく、仕様をつくりながら開発を進めるには柔軟な対応が求められる。こうしたケースでは開発コストが膨らみやすく、価格面においても大手と折り合いをつけるのは難しかった。

 相談を持ちかけられたさいたま総研では、ITコーディネータや中小企業診断士、IT技術者など総勢約50人のなかからICタグ関連に詳しい最適な人材を選抜、開発に当たった。「メンバー1人1人が得意分野を持っており、顧客の要望に合わせてプロジェクトを遂行する」(合田理事長)と、専門家としての助言を通じてよりよいシステムづくりに力を入れたと話す。

 異業種間ICタグデータの共有・活用は先進的な取り組みとして高く評価され、中小企業庁の「2005年度IT活用型経営革新モデル事業」に採択された。産官学連携の実績も多いさいたま総研では、こうした先進事例を通じて得意分野をさらに伸ばすこで事業拡大を目指す。一方、ガードナーでは、ICタグを取り付ける商品数を徐々に拡大し、将来的にはICタグ装着を標準仕様にすることで他社との差別化を進め、シェア拡大に結びつけていく方針だ。(安藤章司●取材/文)
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