ユーザー事例 経営がITを変える

<ユーザー事例 経営がITを変える>11.日本製粉【下】

2006/06/19 20:29

週刊BCN 2006年06月19日vol.1142掲載

客先の返却意識を高める

単純な仕組みが効果的

 自社が製品配送に使用するパレットを客先から確実に回収する方法はないものか──。パレット管理特有の複雑な流通形態への対応と顧客の意識改革を促すシステムが求められていた。

 パレットは流通するのが本筋であり、仮に日本製粉に戻っていなくても一概に「流失」とはいえない面がある。実際、盗難など完全な滅失は少数と見られ、客先で利用されたり、流通先の倉庫で活用されているケースが多い。

 返却が遅れる背景には、客先がパレットを「借りている」という意識が薄いことがあげられた。

 日本製粉が課題とするパレット管理に的確なアドバイスを提供したのがニッセイコムだった。バーコードで記された「納品先の顧客番号」と「パレット固有の番号」の2点を、出荷時にハンディターミナルで読み取るという単純な仕組みだ。これならコストもかからない。

 パレットを誰に何枚貸したかを積算していくことで客先別の貸し出し枚数を記録しておく。次に日本製粉の事業所へ返却された際に読み取ったパレット番号を、先の客先別に管理していた貸し出し枚数から差し引いて更新する。

 現場の担当者がバーコードを読み取るだけで、コンピュータが自動的に「今、誰に何枚貸し出しているのかを割り出す」(ニッセイコムの藤原守雄・執行役員第一システム技術本部本部長)仕組みである。

 ポイントは全国の工場や物流拠点を横断的に管理する統一データベースをつくり、返却されたパレットをほぼリアルタイムに近い形で「貸し出し枚数」から差し引いていくところにある。

 出荷したパレットは、いつどこの事業所に返却されるか定まっていない。従来の台帳方式で管理していた時は、全国レベルでの突き合わせができずに、事実上管理不能な状態になっていた。

 厳密さが要求される販売や財務の管理システムなどとは異なり、パレットの流通形態に合わせたゆるやかな管理方法ではある。

 だが、少なくとも現時点で何枚のパレットが自社内にあるのか正確な数の把握ができ、かつ貸し出した客先に向けては「今、○○枚貸し出している」と、コンピュータが自動的にファックスや電子メールで通知するようにした。「ちゃんと返してくださいね」というメッセージによって客先の返却意識を高めてもらうのが狙いだ。

 ニッセイコムはもともと日本製粉の出荷管理システムを20年来担当してきた実績があり、倉庫物流に精通していたことが開発に当たって大きな強みとなった。

 パレット管理の手法は日本製粉が特許を出願しており、十分な費用対効果が見込めるためニッセイコムと協業して外販することも検討している。(安藤章司●取材/文)
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