SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>24.東京システムハウス(下)

2006/11/13 20:37

週刊BCN 2006年11月13日vol.1162掲載

COBOL開発環境で活路

KDDI研究所と提携、次世代製品を

 東京システムハウス(高橋勝也社長)は1995年、米アキュコープと提携し、COBOL開発環境(コンパイラツール)「ACUCOBOL(アキュコボル)」の総代理店として同ツールの提供を開始した。IT業界に「西暦2000問題」が浮上した頃のことだった。レガシーシステムを抱える国内企業の間でオープン環境に移行する動きが高まると予測し、先駆的に取り組むべきという考えがあったからだ。加えて、「ユーザー企業と直接取引する」(林知之・取締役システムパッケージ事業部事業部長)ことを考えての判断だったという。

 「下請け」に甘んじていれば、高収益は確保できない。事実、未だに大半のSIerが「人出し(派遣業務)」を柱にし、「元請け任せ」の傾向がある。同社は創業以来、「バランス経営」を社是(経営理念)としてきた。ユーザー1社当たり自社売上高の10%を超える案件にはタッチしないことや、ひとつの業界に偏らず幅広い業界にアプローチする戦略を志向してきたため、「ごく一部を除き、直接受注で動いている」(林取締役)という。

 「ACUCOBOL」の採用で企業の基幹業務をつかみ、業界特有のパッケージ製品を出し、「直接受注」の顧客を得ることに成功した。現在、「ACUCOBOL」事業は、パッケージ事業全体の30%を占める。同事業だけでは、営業利益率が10%を超える。同ツールを利用するパートナーSIerは現在148社にのぼる。

 COBOL環境のレガシーシステムは、国内に汎用機が約1万台現存するといわれる。しかし、これをオープンへ移行する需要は「あと5年程度がピークでしょう」(林取締役)とみる。そこで、同社は次世代事業の柱を築くため、毎年「研究開発」に1億円程度を投資している。

 5年前、KDDI研究所と提携し、同社の最新技術や知識を共有する会員組織「KT-NET」を設立した。マルチメディアや移動体通信、プロードバンドなど、KDDI研究所に埋もれる成果物を利用して、会員内で次世代製品を開発しようとしている。会員は約150社。同社ではこれを「秋葉原のパーツ屋パーク」と呼び、新規ビジネスを打ち出す計画だ。

 林取締役は「個人の能力により、仕事の生産性が80%左右される」とみている。「下請け」主体で売上高が22億円の頃、従業員は350人在籍していた。今は、売上高30億円以上で同150人と、生産性が実質上3倍になっている。「個性的で夢や目標をもつ人材を採用する」ことを徹底している。同社社長の名前をとり、「当社を“高橋学校”として足がかりにし、大いに独立しろ」というスタンスで「頭脳集団」を築いてきたのだ。

 同社の取引先は、新規導入や保守を含め毎年約1000社。ゴルフ場運営管理システム「SI倶楽部2」の取引先だけで、全国300コースある。大手メーカーなどの垣根を越え、独自路線で活路を見出すベンダーとして貴重な存在である。(谷畑良胤●取材/文)
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