視点

利益率向上と選別受注の動き

2006/11/20 16:41

週刊BCN 2006年11月20日vol.1163掲載

 情報サービス会社の2007年度上期(4─9月)決算が相次いで発表されている。そのなかで、受託型情報サービス会社の多くは05年度に続いて増収増益の好決算となっている。

今年6月時点で行った調査で、「受注は増加傾向にある」とする回答が65%、「価額抑制の圧力は緩和しつつある」が36%という結果だったので、上期決算の好調は十分に予想された。この傾向は下期以後も続くと見られるので、来年3月末の通期決算も見通しは明るい。

 事実、決算短信に記載されている受注状況を見ると、各社とも上期・下期が前年同期に対してプラスとなっている。受託型情報サービス業では検収が集中する下期偏重だったが、工程別の分割契約に移行するなどで平準化する傾向が読み取れる。ともあれ、受託型情報サービス業はおおむね04年度で底打ちし、継続的な上向きに転じたといっていい。

 とはいえ、手放しで喜んではいられない。ひとつは受注増に対応する技術者の確保という課題がある。多くの企業は外注を拡大する戦略を明確にしているが、短期的には(1)受注価額が管理コストの増加を吸収できるか(2)受注案件の丸投げや海外オフショアの拡大が不採算プロジェクトに結びつかないか、中長期的には(3)自社の知的財産として蓄積が可能か──という懸念がある。

 ソフトウェア受託開発に軸足を置いている企業に上期の受注価額上昇率を聞くと、「2─5%」という回答が多い。背景にIT技術者の需要と供給の関係があるのはもちろんだが、受注価額全体を引き上げる要因として大きなウエートを占めているのは、二次、三次の再委託契約(下請け)を直接の契約に切り替える動きだ。二次、三次の下請けに位置しているソフト会社からすると、仲介マージンが上乗せされるので人月単価が1割前後アップする。技術者不足が多重下請け構造の改善につながる可能性がないでもない。

 手放しで喜べないもう一つの課題は利益率だ。受託型情報サービス業の05年度通期業績で営業利益率は5.7%、純利益率は3.7%。今上期決算でもほとんど上昇していないばかりか、減少したケースもある。「営業利益率が10%はないと世間並みとはいえない」(アルゴ21の太田清史社長)というなか、より高い利益を求めて選別受注にシフトする動きもある。仕事になれば何でもいい、という受注優先、売上高重視の経営から利益重視への転換がはっきりしてきた。
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