SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>27.シーイーシー(上)

2006/12/04 20:37

週刊BCN 2006年12月04日vol.1165掲載

アカウントプランを推進

顧客に密着して課題を分析

 シーイーシー(CEC、新野和幸社長)はSI事業の付加価値化に力を入れる。SE・プログラマ1人あたりの月額費用である人月単価をベースとしたビジネスからの転換を加速。顧客企業に密着した“アカウントプラン”を推し進めることで上流の課題分析から下流の保守サービスまで一貫した受注を増やすことで収益力の増大を目指す。

 社長に就いて間もない2005年夏、新野社長は顧客それぞれとの関係を強める施策としてアカウントプランを開始した。これまでの顧客からの発注形態や顧客からみたCECの位置づけなどを詳しく検証し、真のITパートナーとしてどれほど認知されているかを丁寧に調べ上げた。もし人月単価をベースとした見積もりや受注が主体であるならば見直す必要があると考えたからである。

 SE・プログラマの人月単価に依存していては、システム設計や構築、運用など大手SIerの総合力に見合う十分な対価は得られない。業界ではオフショア開発の拡大などで人月単価は下がる傾向にある。アカウントプランでは、顧客の抱える課題をともに考え、CECの総力をあげて解決する関係を築き上げることを重視する。

 エピソードがある。ひとりの営業マンが3年ほど前に首都圏のある大手製造会社から注文をとってきた。新規顧客ということもあり、顧客が何を考え、何を求めているのかを担当部門全体でじっくり考えた。その会社はなぜCECに発注したのかも気になった。よく話を聞いてみると以前から取引があったSIerはハードウェア販売は得意だがSIの能力が十分でないとの不満を持っていることが分かった。

 顧客にしっかり張りつき、顧客の抱える課題の解決に全力を注いだ。こうした顧客本位の姿勢が認められ、3年前にはゼロだった受注が今年度(07年1月期)の見通しは10億円近くにまでに拡大した。「来年度は専門部署をつくってもいい規模にしたい」と手応えを感じている。アカウントプランはこの成功パターンを横展開するものだ。

 顧客からの発注を待つ“指示待ち型”や自分の売りたいものだけを売る“売り逃げ型”はSI業界ではもはや許されない。顧客の課題を解決し、顧客に利益をもたらしてこそ相応の対価が得られるということの証だ。

 CECの顧客は総合電機や自動車製造、通信事業者など大手が多い。こうした顧客は通常複数のSIerやソフト開発ベンダーと取引があり、ITベンダーの特性を見極めながら発注先を決める。メインのITパートナーと認められれば付加価値の高い仕事をさせてもらえる。一方で人月ベースの見積もりを依頼し安ければ発注するという希薄な関係もあり得る。顧客内における自社の位置づけやシェアが利益率を大きく左右する。(安藤章司●取材/文)

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