全日空の予約システム、NTTのひかり電話と大規模なシステムトラブルが続いている。背景には、端末側の利用環境が急激に進化する一方で、システム全体が複雑化し、運用管理が追いつかない状況がありそうだ。

 そんな折り、経済産業省がIT投資効率化の提言を発表した。日本のIT投資が生産性向上に果たす役割は非製造業で米国の14分の1、製造業でも半分にとどまるという。その要因をソフト開発の「自前主義」と指摘し、ソフトの共同開発や汎用品の積極的な活用を進めるべきと提言している。

 だが、この提言、業界での評判は芳しくない。官公庁のシステム自体が、自前主義の固まりであるのはおくとしても、共通ソフト環境ではリソースへの負担が大きいうえに、個々のシステムの動作検証に時間がかかりすぎる。現実的ではないというのだ。確かに、日本のシステム開発の職人的な精緻さは、標準ソフトの比ではないだろう。しかし、世界的にみれば、システム個々の最適化よりは、汎用品を組み合わせることで、短時間で新しいビジネスモデルを構築するスタイルが当たり前になっている。

 スクラッチ開発の優位性はあるとしても、日本で標準ソフトが日の目を見なかったのは、結局のところ独自規格の収益性と参入障壁にこだわった結果にほかならない。逆に、システム障害が一般消費者を巻き込んで社会問題となるほどシステムが巨大化した現在では、自前主義のリスクを改めて見つめ直すべきだろう。

 従来の開発環境からの転換には当然リスクを伴い、中期的な生産性の低下も避けられない。しかし、自前主義の呪縛から抜け出さない限り、日本のIT産業にとって将来の展望はない。国内に閉じこもるしかない日本の携帯電話産業がその典型だろう。

 標準化に対する挑戦は、むしろユーザー企業のほうが積極的だ。トヨタ自動車は、車載用の標準OSの独自開発に着手した。携帯電話でも、ソフトバンクが携帯電話用アプリケーションの共通プラットフォームの開発に名乗りをあげた。巨大キャリアが独自規格に固執するなかで、最後発組にふさわしい挑戦だ。

 それにしても、自前主義の閉塞状況に風穴を開けるには、発注者であるユーザー企業の意思決定に頼らざるを得ないのか。ソフトウェア産業からの新しい動きに期待したい。