次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>32.京セラコミュニケーションシステム(下)

2007/11/19 20:40

週刊BCN 2007年11月19日vol.1212掲載

ニッチ市場開拓で2万台目指す

 京セラコミュニケーションシステム(KCCS、森田直行社長)は、MVNO(仮想移動体サービス事業者)の事業と、データセンターサービスを組み合わせた位置情報サービスを開始した。GPS端末を使い、収集した情報を「D@TA Center」でシステムを運用管理する、位置情報サービス「SAVE PLATFORM」を2005年9月から企画し、06年3月に事業化した。

 だが、市場に出ているGPS端末が高額なため、思うように普及しないという壁にぶつかった。そこで、通信カードを使用した精度の高いGPS端末を安価に提供しようと新たに開発に着手した。

 同社は市場に出ている端末に必要な機能が搭載されていなかったことから、新たにGPS端末「イチしるべ」を開発した。「イチしるべ」は端末から自動的に位置情報や業務情報を発信できるようにし、また送信形式も自由に選択できるようにした。50-100メートルずれれば軌跡管理ができなくなることから、プラスマイナス2.5メートルまで精度を上げた。「親会社の京セラに、品質検査などで協力を得ることができた」(西日本ICT営業本部の森田正文・西日本プロダクト営業1部長)。

 当初見込んでいた配送業や運送業からは、「その当時の排気ガス規制など、法令順守に対する投資が優先され、なかなか引き合いが上がってこなかった」(森田氏)ようだ。

 だが、営業を進めるにつれ、排ガス規制投資などが一段落した秋口から「軌跡管理」で徐々に引き合いが増えてきた。GPS端末は無償でパートナーに貸し出し、40社で実証実験を行った結果、現在、商用で5社が導入するに至っている。

 GPSで速度が測定できることから、スピード違反や飲酒運転の抑止にも役立つシステムで、現在では、自治体が民間に委託している清掃車や除雪車の運行管理などに活用されている。「清掃車や除雪車は、運行距離で金額が決まる。なかには同じ道を何度も行き来し、距離を稼ぐ民間業者もいるため、それを防ぐ意味合いもある」のだという。

 SAVE PLATFORMは車両向けが主力で、配送業や運送業にさらに拡販する意向だ。「このサービスは『社会貢献』だと思っている。自治体の仕事を請け負うことで社会貢献している民間企業を支援できる」(原良行・GPIS事業部GPISソリューション課長)。ニッチな世界だけに今後は潜在的な需要を汲み取りつつ、2万台の売り上げを目指す。(鍋島蓉子●取材/文)

 

  • 1