IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>45.Afje(上)

2008/05/05 20:45

週刊BCN 2008年05月05日vol.1234掲載

必要なのは最低限のITインフラ

 Afje(斎藤敏男代表取締役)は、静電気除去装置の開発・販売事業を営む。設立は2006年と若い企業だが、技術には定評がある。独立行政法人の産業技術総合研究所(AIST)と、61年設立の老舗静電気除去装置メーカーFISAの共同出資会社で、商品にはAISTとFISAの技術力が詰まっているからだ。

 主軸商品の「DYNAC FD Series」は、「マイクロプラズマイオン化素子」と呼ばれる薄膜状の素子を使ってイオンを発生させ、静電気を中和・除去するユニークな商品。電子部品やプラスチックなどの製造では、静電気によるトラブル発生が致命的なミスをもたらす可能性があり、こういった場面で活躍するという。本社は茨城県に置くが、5月下旬にもそれを東京・大田区の営業本部に移す予定で、慌しい空気が流れている。

 ITコーディネータ(ITC)の岡田怜氏が、Afjeに関わったのは創業時の06年から。今から約3年前、ITコーディネータ協会が始めた「大田区の中小企業をITで元気にしよう」という特別プロジェクトがきっかけ。大田区生まれの岡田氏は、出身地への貢献を考えており、迷わず参加。ITコーディネータ協会が同区の中小企業150-200社を選び出し、数人のITCが支援するプロジェクトだ。そのなかでAfjeを岡田氏が担当することに。ITCとしての仕事をこなしながら、同社のCIOに就任した。

 岡田氏が考える中小企業のIT化プランは一風変わっている。「10人前後の中小企業は経営戦略にマッチしたIT化、戦略的IT投資などといった格好良いプランはとりあえず必要ない。いかに最低限のITインフラを素早く立ち上げるかだ」。岡田氏は中小企業約10社のIT化をサポートしてきた経験から、そう感じている。また、「中小企業の経営者には複雑・難解な提案よりも、すぐに結果が出て効果が分かりやすいITインフラを提供しなければ信頼を勝ち取れない」とも言う。最低限のインフラを優先するのは、こうしたビジネス推進上の理由もあるそうだ。

 岡田氏は、今から約5年前、リコーを役職定年退職し58歳でITC資格を取得。企画や営業支援業務に従事してきたサラリーマン時代とは違った世界に飛び込み、中小企業のIT化をサポートしてきた。その一方で、リコーの人材育成子会社であるリコー・ヒューマン・クリエイツでは、IT導入のためのスキルマップや教材作成にも携わっている。

 Afjeでも、自身が痛感した中小企業に最低限必要なIT化支援策を展開することに主眼を置いた。具体的に推進した施策は(1)ネットワークの整備(2)グループウェア導入(3)ホームページの作成(4)会計・給与パッケージの導入の4点だ。

 各施策の導入に際し、岡田氏は特定のベンダーに全てを任せるのではなく、施策ごとに自らベンダーを選定。導入製品・サービスの選定も自分で行うことにした。Afjeが岡田氏に依頼したのは設立予定日の約2か月前、わずかな期間での導入作業が始まった。
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