“特命チーム”で全体最適の設計に

 千葉県産業振興センターの紹介で2007年初夏、理化学機器メーカーのマイクロテック・ニチオンを訪れた浅井鉄夫・ITコーディネータは、「ITの活用度合いは高いが、個別最適にとどまっている」と、直感した。ウェブや顧客管理データベース(DB)、グループウェアなど基本的な要素はあるものの、それぞれのシステムが個別に最適化されており、全体的なIT戦略に欠けている。

 情報システムを新しく担当することになった本田千種さんと経営サイドの本田周社長、本田雅秀専務、浅井ITCの3者からなる“特命チーム”を軸に、全体像の設計に入る。まずは、管理者不在で頻繁に停止していたサーバー群のうちウェブやメールサーバーなどは外部にアウトソーシングすることを即刻決めた。社内で運用するのは顧客情報を扱うDBに絞ることで管理担当の千種さんの負荷を軽減。DBを中心とする営業支援システムの整備にリソースを集中する。同時に「“ITは売り上げ増に結びつく成長エンジンである”という方向性を明確に打ち出す」(浅井ITC)ことで、モチベーションを高めた。千種さんは、「バラバラだったITを体系化するITCのノウハウはとても新鮮で勉強になる」と、手際の良さに感心しきりだ。

 営業を統括する大西信弘・営業部長の協力を得て、営業担当者が表計算ソフトなどで個別に管理していた情報をDBで一括管理する仕組みを強化。一方で、DBから表計算ソフトへ容易に情報を出力できることや、DBのチューニングで検索する精度を高めるなど、「営業担当者の利便性」(大西部長)も確保した。

 技術部の高山幸久・次長にも掛け合い、自社製品で、食品などの成分分析に欠かせない破砕装置や、科学捜査にも使うルミノール反応の測定器の技術解説を執筆してもらってウェブに掲載した。SEO(検索エンジン最適化)対策の一環で、農薬が食品に混入した問題や、推理小説などに出てくるルミノール反応という単語にヒットするよう心がけた。これは「予想以上の反響」(高山次長)があり、従来接点がなかった顧客層からの問い合わせも増えた。

 ウェブは潜在顧客を含む顧客情報を集めるフロントエンドとして活用し、集まった情報はバックエンドのDBで分析・分類。営業担当者がこのデータを活用して受注・売り上げに結びつける仕組みを構築。今年度(2009年3月期)は、システムの整備・構築のフェーズから、本来の目標であるITを活用した経営改革フェーズへと移行する。綿密に調べたデータを武器に、「売り上げ増につなげる」(本田専務)と鼻息が荒い。

 経営トップのリーダーシップと実行力、社内のIT技術力、ITCの紹介を含む適切な公的支援を受けたことがプロジェクトの円滑な遂行に結びついた事例といえよう。(安藤章司●取材/文)