ビジネス利用も視野に

 ニコニコ動画が採用した「ニコニ・コモンズ」は、第一義的にはクリエーター同士がコンテンツを共有し、創造活動をより発展させることが目的である。これだけなら、ニコニ・コモンズづくりの参考にしたクリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスに準拠した形でも問題なかったはず。しかし、実際にはいくつかの馴染まない点を“ローカライズ”した。

 まず、ニコニコ動画の現状を考えると、権利者の承諾を十分に得ていないコンテンツをもとにした二次的な創作作品が少なからずある。いくら優れた作品でも、権利者であるコンテンツホルダーの承諾を得ていなければ削除せざる得ない。

 ニコニ・コモンズでは、こうした現状を踏まえ、ユーザーやクリエーターが創造活動のためにコンテンツを共有するのみならず、既存のコンテンツホルダーにも“ビジネス活動の一環として”参加しやすいよう設計した。具体的には、ライセンスの条件を後から改変できたり、ニコニ・コモンズに公開したコンテンツを一定期間後に削除できる機能を盛り込んだ。

 CCライセンスでは、一度設定したライセンス条件を一方的に変えることは原則としてできない。この点、ニコニ・コモンズでは公開する場所をニコニコ動画や提携先のユーザー参加型メディア(CGM)サイトに限定する選択肢を用意することで、ライセンス条件を後追いで変更しても、歯止めがきくようにした。インターネット全体に適用すると、仮に後からライセンス条件を変えても、すでに広まってしまったコンテンツをコントロールすることは難しいからだ。

 例えば、あるゲーム会社が新作ゲームを発売するタイミングで、当該作品のプロモーションビデオ(PV)やプレイ動画などをニコニ・コモンズに掲載する。あらかじめ製品発売後3か月限定での利用をニコニ・コモンズで宣言しておき、期限が過ぎたらライセンス条件を変更して利用できなくする。ユーザーは期間限定でこの動画を素材に使った二次創作作品やリミックスした作品をニコニコ動画に公開して楽しむ──などが考えられる。もし、ニコニ・コモンズに公開したら最後、コントロールがきかないとなればコンテンツホルダーが二の足を踏むことも考えられる。

 思惑通り、コンテンツホルダーが参加するかどうかは未知数。だが、「一部のコンテンツホルダーとはいい雰囲気になりつつある」(ドワンゴの伊織巧人執行役員)との感触を得ている。ニコニコ動画のID登録数はおよそ800万件という規模に達しており、コンテンツホルダー側もニコニ・コモンズを活用したマーケティングに踏み出す可能性もある。(安藤章司●取材/文)