ネット・サービス型の提案が主流に

 本欄では、経済産業省が2008年版として表彰した「IT経営力大賞」のうち、ITコーディネータ(ITC)が関わった全国(北海道・札幌市から大分県宇佐市まで)の16事例を08年8月から「IT経営力大賞シリーズ」として紹介してきた。

 このコーナーはすでに87回を数えている。連載開始から前半に取り上げた事例は、中小製造業などで多く残存するオフコンやサポートが切れたWindows環境など「レガシーシステム」をどうオープン化し、パッケージなどと連携して自社独自のアプリケーションを柔軟に追加しつつ生産性をアップさせるかという導入事例が目立った。

 今回の「IT経営力大賞シリーズ」で特徴的だったのは、「SaaS/クラウドコンピューティング」という言葉が一般化したことなどが影響してか、インターネット上のサービスを利用し、安価に新システムを導入する事例を取材するケースが増えたことだ。

 同シリーズの第1回目で紹介した北海道・札幌市の農産物・水産物を小売・卸販売する「共栄水産」は、同市郊外の「札幌中央卸売市場」で店舗を構えて道内の旬素材を販売する傍ら、オンラインショップ「楽天」や自社サイトでの通販によって全国販売を実現した。しかし、通販の生鮮市場は「価格競争」が激しく、利益率を上げるため経費、原価、顧客管理を徹底するシステムを導入した。

 また、福島県の山奥、会津柳津町のひなびた温泉地にある旅館「花ホテル 滝のや」は、いまでは当たり前の自社ホームページにインターネット予約機能を開設して宿泊客を取り込むほか、有力コンテンツとして「女将ブログ」やSNSの「Web2.0」的な展開を行い、お客の気を引いた。その結果、現在では予約客の70%をホームページ経由で獲得するまでになっている。

 このほかにも、携帯電話の通信環境を使ったシステムも散見された。中京陸運が携帯電話のGPS(全地球測井システム)を使った運行管理を実現したり、製造業などで「多品種・小ロット」の案件を大量受注するために、携帯電話でSFA(営業支援システム)を活用できるようにする事例もあった。

 SaaS・クラウド時代になれば、中小企業のシステム構築を支援するITCには、従来のクライアント/サーバーシステムに加え、サービス型のシステム提案力も求められてくる。「IT経営力大賞」を受賞した企業を支援したITCには、独立系ITCになる前までIT業界でSE(システム・エンジニア)などの経験を積んだ人が多い。こうしたITCの大半は、SIerなどに頼らず自身で調達してシステム構築する。この傾向は、1人のITCで「複数案件」を抱えられないという問題を生みだしてもいる。