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No.11 シリコンバレーのニューチャレンジ 反撃に転じる大手ベンダー パブリックからエンタープライズクラウドへ
2009/10/29 16:18
週刊BCN 2009年10月26日vol.1306掲載
これまで守勢に回っていた大手ベンダーが、いよいよ反撃に転じてきた。アマゾンやグーグルはともかく、ISP系のGoGridやServerBeach、大手データセンター系ではSAVVISやRackSpace、Terremarkなども市場に参入してきた。これらのほとんどはパブリッククラウドだが、彼らはこれにVPN(Virtual Private Network)を適用したり、クラウドをホスティングする形でプライベートな形を好むエンタープライズ市場にも進出し始めた。こうなると大手ベンダーも黙ってはいられない。
初めに動いたマイクロソフト 最初に動きを見せたのはマイクロソフトである。昨年11月のカンファレンス「PDC(Professional Developer Conference)2008」でWindows Azure(アジュール)を発表した。Azureはいわば.NETのホスティング環境であり、5項目(Live/.NET/SQLAzure/SharePoint/Dynamics CRM)のサービスが用意されている。 Azureは本来、11月のPDC 2009で商用(β)版となる予定だったが、急遽、7月のパートナーカンファレンス「WPC(Worldwide Partner Conference)2009」で予告発表された。それによると11月以降、提供されるのは、三つのコンポーネントだ。プラットフォームのWindows Azure、その上に.NETアーキテクチャの実行環境となる.NETサービス、そしてSQL ServerベースのクラウドストレージSQL Azureが利用できる。また発表では、パブリッククラウドに加え、企業向けのプライベート版も追加された。さらに、Azureの展開は、当初予定の同社データセンターの増強から、世界中のパートナーのデータセンターで展開する戦略に切り替わった。つまり、これ以上、アマゾンなど先行組から引き離されず、一方では追いすがるIBMやサンなどを引き離すためである。IBMのダイナミックインフラ 2番目に動いたのはIBMで、今年2月のことだ。仮想インフラとSOA、サービスマネジメント・プラットフォームなどからなるダイナミック・インフラストラクチャを発表、6月にはクラウドサービス名をSmart Businessブランドに統一した。 その後、パブリックとプライベートの二つのクラウドビジネスを始動させ、パブリックではRationalのライフサイクルをベースとした開発&テスト環境をプレビューとして提供、プライベートではシステム構築支援のアプライアンスCloudBurstを発表した。CloudBurstはSUSE Linuxに仮想化のVMware ESX、自社のWebSphereやTivoliプロビジョニング/モニターなどが搭載されている。これを使えば簡単にプライベートクラウドの構築ができるというわけだ。さらに8月末、IBMはパブリッククラウドを利用した仮想デスクトップサービスSmart Business Desktopを米国と欧州で11月から開始すると発表した。シンクライアントを用い、デスクトップのすべてのソフトウェアをクラウド越しのサーバーにもたせるこの方式は、仮想化技術の延長として普及しているが、パブリッククラウド経由で提供するのはこれが初めてである。見逃せないサンの動き 気になるのはサン・マイクロシステムズだ。今夏、予定されていたβ版の発表が遅れている。3月18日、ニューヨークでのサンのOpen Cloud Platform(オープンクラウド・プラットフォーム)発表当日、早朝からIBMによる買収の噂が流れ、ウォールストリートでは株価が高騰した。結果的にオラクルが買収することになったのは周知の通りである。 8月末、米司法省からこの買収の認可が下りたが、欧州委員会は、サン傘下のオープンソースMySQL(2008年1月に買収)がオラクル・データベースと競合するため、市場への影響を見極める調査を開始、最終判断が出されるのは来年初めだ。遅れの原因はここにある。さて、オープンクラウドだが、このプラットフォームは、これまでサンがオープン化してきたJava製品のほとんどすべてをコンポーネントとしている。 また一方で、アマゾンS3との互換やプロジェクト運用管理のアパッチMavenなどとも連携も深め、広範囲なオープン化を目指し、IaaSだけでなく、PaaSやSaaSの全領域をカバーする狙いだ。このオープンクラウドの仮想化技術は、サンが開発したXenベースのxVMシリーズ(SunxVM Server/xVM Ops Center)だが、オラクルには同様のVMシリーズ(Oracle VM Server/VM Manager)があり、5月に買収したVirtual Ironもある。これらのXenベースの仮想化技術は統合され、より強力になったクラウドが登場するかもしれない。
これまで守勢に回っていた大手ベンダーが、いよいよ反撃に転じてきた。アマゾンやグーグルはともかく、ISP系のGoGridやServerBeach、大手データセンター系ではSAVVISやRackSpace、Terremarkなども市場に参入してきた。これらのほとんどはパブリッククラウドだが、彼らはこれにVPN(Virtual Private Network)を適用したり、クラウドをホスティングする形でプライベートな形を好むエンタープライズ市場にも進出し始めた。こうなると大手ベンダーも黙ってはいられない。
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