この連載は、IT業界で働き始めた新人さんたちのために、仕事で頻繁に耳にするけれど意味がわかりにくいIT業界の専門用語を「がってん!」してもらうシリーズです。
柴田克己(しばた・かつみ) ITをメインに取材・執筆するフリーランスジャーナリスト。1970年、長崎県生まれ。95年にIT専門紙「PC WEEK日本版」の編集記者として取材・執筆を開始。その後、インターネット誌やゲーム誌、ビジネス誌の編集に携わり、フリーになる直前には「ZDNet Japan」「CNET Japan」のデスクを務めた経験がある。
説明できればツウ?「三つのV」
「ビッグデータ」を難しく考える必要はない。単に“ビッグ”なデータである。
企業が扱うデータは、ITの歴史とともに増加し、しかも多様化している。導入したシステムの数が増え、文書ファイルのサイズが大きくなり、高解像度の写真が増えるなど、要因を挙げたらきりがない。ビッグなデータは社外にもある。例えば、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアに投稿された大量のデータが、多くの企業で活用されるようになった。
もう一つ、ビッグデータが注目されるようになった背景には、別の側面がある。それは、データを格納するストレージ(ハードディスク)の低価格化、大量のデータを分析する技術の向上というITの進化である。このようなことから「ビッグデータ」が身近になり、何かともてはやされるようになった。
とはいえ、ビッグデータを“単なるビッグなデータ”と新人さんが言えば、先輩に鼻で笑われてしまう。そこで、ツウっぽい解説の方法を紹介したい。
それは「三つのV」である。「Variety(多様性)」「Volume(物量)」「Velocity(速さ)」の頭文字をとったもので、アナリストなどが得意げに「ビッグデータの性質」として使っている。詳細は次の通り。
「Variety」は、扱うデータの種類が増えていることを意味する。「Volume」は、蓄積されるデータのサイズや総量(ボリューム)が爆発的に増加しているという意味。「Velocity」は、データの増加のスピードが加速していることを指す。要は、データがビッグになっていることをまとめただけだが、基礎知識として知っておいたほうがいいだろう。
ビッグデータで「未来」がみえる!?
ビッグデータによって、どのようなことが可能になるのだろうか。典型的な例としては、「過去の状況を整理するだけでなく、“今まさに起こっていること”や“これから起こること”をデータから知る」ことが挙げられる。
売上データをグラフにして、時系列で見比べながら今後の戦略を立てることは、古くからあるデータの使い方である。それがビッグデータの世界では、まったく違ってくる。
例えば、チェーン展開をしている小売業などであれば、複数の店舗での売上推移に、地域特性、季節のイベント、天候や時間帯などのさまざまなデータを組み合わせてモデルをつくることで、より精度の高い販売予測が可能になる。より正確な「未来」の予測は、売り上げアップなどの業績向上に貢献するとして、ビッグデータに対する期待は大きい。
活用方法の模索が進む
ビッグデータの活用方法は、まだまだ模索段階にある。その点で現時点でのビッグデータは、個々の技術要素や製品というよりも、それらを含めた今の「状況」を表している言葉と捉えるほうが、より正確かもしれない。
多くのITベンダーやユーザー企業がビッグデータへの取り組みを進めるなかで、さまざまな事例も出てきている。そうした最新の事例にアンテナを伸ばしつつ、「どんなことができるのか」を知り、「別のどんな課題の解決に応用できそうか」を常に考える習慣をつけておいてほしい。
Point
●ビッグデータの特性は、「Variety」「Volume」「Velocity」の「三つのV」にあると説明するのが、ツウっぽくみせるポイント。
●以前には現実的でなかった大量のデータや手法を使って、過去の結果だけでなく「今」や「未来」をより正確に知るための方法が多くの企業に開かれている。