同世代の人が集まると、よく音楽とのつき合い方の話題が出るのだが、一体何が変わったのだろうか。確かに“音楽を買う”というプロセスは大きく変わった。レコードからCDになり、ネット配信になった音楽メディアのイノベーションは、レコード店に通って音楽と出会うというスタイルを奪っていった。だからといって、音楽との出会いがなくなったわけではない。気に入った音楽は、ネットを使えばキーワード一発でたどり着くことができ、むしろ音楽は身近になったのだが、音楽が及ぼすライフスタイルへの影響度は小さくなってきた。
メディア業界のコンサルタントであり、ミュージシャンである友人のエリック松永氏が、最近、レコードプレーヤーを買った時のコメント。「レコードって、片面30分しかない。ステレオの前に座って聞かないと、すぐに終わってしまい、裏返さなきゃいけない。思い出したけど、音楽って、さあ聴くぞって、コーヒーを淹れて準備してから聴くものだった」。このコメントには、変化したものの本質がある。最近は一人ひとりの嗜好を判断して好みをチョイスし、エンドレスで流してくれるサービスが多数あって、音楽を聴くのに準備が要らなくなった。その点、昔はステレオセットの前に座り、聴く態勢をつくってから音楽を流すのが一般的なスタイルであり、今とはまったく違っていた。当時と変わらずの売り方をしながらCDが売れない!という声もよく聞くが、音楽の役割が大きく変わってきていることを前提にして、提供する側はサービスづくりをしていないのではないだろうか。音楽をエンターテインメントビジネスとして認識し、課金できるサービスに変えて提供することが必要なのだ。音楽フェスティバルが一定の成功を収め、ライブを楽しむだけではなく、地域の特産物や物販をミックスしたイベントが一つの形をつくり始めている。音楽を聴かせるだけで課金できた時代から、楽しむ環境を丸ごと提供することが求められる時代へ。この動きを地方創生に向けて推進する団体『one+nation』が立ち上がる。日本全国を音楽フェスと地方のコンテンツのミックスで一つのブランドとして展開していく構想だ。私も賛同し、参加することになった。音楽業界出身ではない常識と視点でエンターテインメントビジネスを創造していきたいと思っている。
事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)

1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。