会社設立が2013年12月のソアレスト。「SOAR(空高く舞い上がる)」を最上級風の造語「SOAREST」にして、“最も空高く舞い上がる”ことを目指し、社名にした。現在は、経営の安定を考慮し、エンジニアが客先に常駐するSES(System Engineering Service)をビジネスの中心としている。ただし、いつまでもSES中心のままでいいとは考えていない。受託開発をこなしながら、アイデアを蓄積して、いずれは自社でパッケージ製品やSaaSなどのサービスの提供を目指している。(取材・文/畔上文昭)
Company Data会社名 ソアレスト
所在地 東京都新宿区
資本金 500万円
設立 2013年12月
社員数 5人
事業概要 システム開発、システムエンジニアリングサービス、システムコンサルティング
URL:http://www.soarest.co.jp/ 遊び心があれば楽しい

可知淳一 代表取締役 ソアレストの企業理念は「開発の楽しさを追求する」。システム開発の現場は、過酷な労働環境だといわれる。本当に過酷かどうかはともかく、仕事は楽しくなければ続けられないとの考えから、楽しさを追求することを企業理念としている。とくに客先に常駐する場合は、仕事場に顧客がいるということもあり、気を遣うため、ストレスを抱えやすい。そこで、顧客とともに楽しいシステム開発を目指し、楽しくシステムを使ってもらおうというわけだ。
そこで社員には、コミュニケーション能力を求めている。「顧客は、楽しい人と仕事をしたいと思っている。技術力は重要だが、コミュニケーション能力を磨けばもっと仕事が楽しくなる」と、自身も技術者として現場に立つ可知淳一・代表取締役は考えている。技術力があっても、端末に向かっているだけなのは健全ではないとの思いもある。そして、「遊び心があれば楽しい」と、可知代表取締役。コミュニケーション能力を支えるのは“遊び心”だという。
自社製品の開発を目指す
このところのIT業界は、人手不足の状況が続いている。それは可知代表取締役も実感していて、「技術者のレベルにもよるが、一人の技術者に対して、10くらいの案件数がある」という。ただし、それはここ数年のこと。リーマン・ショック直後は、経済が冷え込んだこともあり、現在とはまったく逆の状況だった。「当時を知っているので、このままでいいとは思わない。今のうちに対策が必要だと考えている」と可知代表取締役は語る。
SESは景気に大きく左右される。いつかは訪れるであろう不景気に対して、無策ではSES事業者は生き残れない。ただし、会社の設立から間もないことや、まだ事業規模が小さいということもあり、可知代表取締役は走りながら脱SESとなる新たな事業を模索している。
「どんなに小さなサービスでもいいので、光るものをつくりたい。例えば、顧客の“こんなことをやってほしい”といった声を拾いながら、製品化やサービス化の可能性を探っていく」ことを目指している。自社開発のパッケージ製品やサービスをもつことは、働いたぶんだけ収入が得られるSES事業とは事業のあり方が異なるが、企業が大きく成長するにあたっては不可欠な取り組みだと考えている。
SI業界がどんどん高齢化
人手不足は採用にも影響している。「即戦力を採用するのは、本当に難しい。募集の条件を下げて、若い人や未経験者を採用しなければならない状況にある」と、可知代表取締役は採用の厳しさを語る。未経験者を採用するにあたっては、コミュニケーション能力を重視しているという。
ただし、二次請けが多いソアレストでは、未経験者の行き先がないという問題がある。「顧客は即戦力を必要としている。IT投資の予算が限られることもあり、当然ながら未経験者を育てるという意識がない。未経験者が育つ環境にない」と可知代表取締役。一次請けができる大手SIerであれば人材を育成する余裕があるが、SI業界のピラミッド構造の下にいくほど社内で教育するような仕組みをもてない。
その影響のためか、可知代表取締役は「20代後半から30代のエンジニアが本当に少ない。このままでは、SI業界がどんどん高齢化してしまう」とSI業界の将来を危惧している。
ソアレストとしては、まず一次請けができる体力と規模を追求する。そして、自社製品やサービスをもつことで、一人月いくらの人工ビジネス依存からの脱却を目指す考えだ。