このところ、自らクラウドサービスを企画・開発・運用するという立場と、クラウドサービス対応の統合開発・運用管理製品を市場に紹介するという二つの立場から、ソフトウェアの開発・運用・改修のプロセスについて考える機会が増えている。そこで今回は、自分の考えを整理する意味も兼ねて、流行のDevOpsについてクラウド活用という視点からお話しさせていただこう。
皆さんはDevOpsというバズワードをご存じだろうか? その解釈には幅がありそうだが、「開発(Development)過程と運用(Operations)過程が密に体系化された不可分の開発運用管理体系である」と私は勝手に解釈している。グーグルトレンドで見ると、2011年頃から検索され始め、2013年末まで検索頻度が伸びたものの、その後は頭打ち状態である。実際、情報技術系ニュース・サイトでの解説はいくつかあるものの、DevOps関連製品をうたったサイトは多いとはいえない。それでもDevOpsは無視できないトレンドになりつつあると確信している。
昨夏、私が1週間ほど滞在したインドの社員5000人規模のアウトソーシング企業では、セミナールームに幹部社員数十名を集め、社長自ら率先してDevOpsについて真摯な議論を交わしていた。彼らの主要顧客である米国や欧州の企業からDevOpsへの取り組み要求が高まっていたためである。また、調査会社のガートナーも、「DevOpsが2016年までにグローバル2000企業の25%で採用される」との予測を発表している。
ここで私が懸念するのは、国内市場でのDevOpsの議論が相変わらず開発技術者主体のものに偏っており、DevOpsに対して技術的視点からの悲観的な意見が目立つことである。元来、開発技術者や運用技術者は安定を求め、変化を好まない傾向が強く、対してユーザーは積極的に環境の変化に対応することを望む。DevOpsは、本来、なかなか定まらないユーザーの要求、多様化する開発言語やツール、突然変わるクラウドサービスの仕様、次々と新しくなるクライアント端末など、利用環境の絶え間のない変化に対応するための考え方であり、実践するための指針である。その意味で、クラウドの活用を望む先進的なユーザーこそが、自ら率先して取り組むべきテーマであるといえよう。
一般社団法人みんなのクラウド 理事 松田利夫
略歴

松田 利夫(まつだ としお)
1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降、ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。