「SES(System Engineering Service)は自社にノウハウをためるのが難しい」と、ノーステックの横田 靖・代表取締役は語る。現時点ではシステム開発案件が多く、SESはノーステックの主力事業となっている。もちろん、SESを辞めることはないが、いつまでも案件過多の状態が続くとは限らない。その危機感から横田代表取締役は、景気変動の影響を受けにくい分野に注力することで、ノウハウをためて自社の強みとする考えだ。なかでも実績を上げているのが、医療分野と自治体向けGIS(地図情報システム)である。(取材・文/畔上文昭)
Company Data会社名 ノーステック
所在地 北海道札幌市
資本金 1000万円
設立 2005年10月
社員数 40名
事業概要 ソフトウェア開発、技術者人材派遣、アプリケーション販売など
URL:http://north-tech.co.jp/ 短期間で会社規模を拡大

横田 靖
代表取締役 ノーステックを起業する前は、パッケージソフトウェアの営業職に就いていた横田代表取締役。SESを手がける企業のトップは、エンジニア出身が多い。起業当初は、トップ自らが客先に常駐するのが一般的だからだ。その点で横田代表取締役は、珍しい経歴の持ち主ということができる。ノーステックの設立は2005年。スタート時はエンジニア一人と横田代表取締役のみ。カーナビゲーション関連のシステム開発に参加したのが最初で、そこから規模を大きくしてきた。
「いろいろなことがあった。システム開発会社を経営していた知人が病気になったため、会社を譲りたいという話があって、結果的には一部の社員を引き取った。また、別の会社のシステム部隊を引き取ったり、札幌のシステム開発拠点を閉鎖したいという企業の社員を引き取ったりしたこともあった」。ノーステックの社員数は順調に増えて、現在では40人規模になっている。リーマン・ショック時にはシステム開発案件が減り、SESを中心に事業展開をしている企業の多くが苦しい舵取りを強いられた。
ノーステックも例外ではなく、リーマン・ショック時に北海道内の案件が皆無になったという。その状況を乗り切ることができたのは、首都圏の案件を確保できたからだ。「売り上げはしっかり確保できたが、当時、社員には首都圏に出向してもらうかたちになった。現在も東京支店には15人ほどの社員がいるが、基本的には東京採用で、リーマン・ショック時の出向者は、東京支店に残ることを希望した者以外、札幌に戻っている」とのことである。現在では、首都圏の案件を東京支店で確保し、札幌でニアショア開発を担うという体制になっている。
医療関連は単価が高い
カーナビ関連の開発からスタートしたノーステックだが、現在注力しているのは医療分野だ。最初は医療系の画像処理システムから始めて、タブレット端末を活用したシステムなど、事業を拡大させてきている。
「例えば医療機器の保守料は、他の業界で使用する機器の保守料と比較して、高い設定になっている。IT関連においても、医療業界では同様の傾向がみられる。また、景気の影響を受けにくい業界という点でも魅力がある。その分、参入を目指す企業は多いが、専門知識が必要とされるため、新規で参入するのは簡単ではない。当社では、参入から4年でようやく芽が出てきたという感じ」だと横田代表取締役。医療分野で実績を積み重ね、ノーステックの主力事業に育てていくことを目指している。
医療分野と同様に景気の影響を受けにくいのが、公共分野だ。ノーステックでは、パートナー企業のGISパッケージを自治体向けに販売している。災害時の支援システムとして活用できるため、北海道のほか、東北の自治体でも導入実績があるという。地域事情などにあわせたカスタマイズのニーズもあり、同社の売り上げに大きく貢献している。営業畑出身の横田代表取締役のノウハウが、パッケージ販売で生きた格好だ。「パッケージソフトは、売れたら儲かる」と横田代表取締役。将来的には自社パッケージを開発し、SESとの両輪でビジネスを展開していくことを考えている。
経験よりも基礎能力を重視
IT業界で続く人材不足の傾向は、ノーステックにおいても例外ではない。積極的に採用する方針だが、経験が豊富な人材を集めるのは難しい状況にある。そこでノーステックでは、未経験者も積極的に採用している。採用のポイントについて、「基礎能力で判断している。要は頭の回転の速さ。コンピュータの知識がまったくない文系出身者でも、基礎能力が高いと、一人前になるのが早い」と横田代表取締役は判断している。
社員は今後も増やしていく予定。「ある程度の大きな案件を受託するには、もっと社員を増やす必要がある」(横田代表取締役)からだ。現時点の目標社員数は、70人である。