自社の強みはどこにあるのか。技術力なのか、特定分野の業務知識なのか。システム開発は、パッケージ製品と違い、成果物が外部から把握できない。そのため、競合他社の動きがみえにくく、SIerが自社の本当の強みを把握するのは難しい。顧客のイノベーションを支えることができても、自社にイノベーションを起こせないのは、そういった背景が要因の一つとなっていないだろうか。「システム開発がつらい」と感じたBFTは、自社の強みを洗い出し、インフラ基盤の構築事業に舵を切った。(取材・文/畔上文昭)
Company Data会社名 BFT
所在地 東京都千代田区
資本金 9900万円
設立 1994年2月
従業員数 283人(2015年4月時点)
事業概要 インフラ基盤構築、システム開発、クラウド構築
URL:http://www.bfts.co.jp/ 開発規模に浪漫を抱く

小林道寛
代表取締役社長 インフラ基盤の構築を事業の柱とするBFT。サーバーやネットワークを物理的に設置するのではなく、設定するところが同社の事業領域となる。そのため、大手SIerが獲得した案件のインフラ基盤の構築を請け負うことが多い。小林道寛・代表取締役社長によると、「独立系では、当社のような事業を柱とする企業はあまりない」という。
インフラ基盤の構築事業を柱とする以前のBFTは、「創業時から2006年くらいまで、SIerとしてシステム開発を手がけていた。当時は社員がまだ30人ほどの規模だったが、こだわっていたのは大規模案件を手がけること。小さな案件なら、簡単にできてしまう。大規模案件はマネジメントの要素が求められるなど、システム開発に浪漫を感じるため、そこにこだわった」と、小林社長は当時を振り返る。
ただ、大規模開発となると、30人では対応できない。人手不足を補うため、パートナー企業に助けを求めることになるが、本当に苦しいときにいなくなるなど、「システム開発が滞り、しんどい思いをした。しんどいだけで、なかなか報われない」(小林社長)という想いを抱いていた。
苦しいのは社員も同じ。大規模案件をやめて、小規模案件へと方針転換をすれば課題は解決するが、“そこには浪漫を感じない”となってしまう。浪漫を感じなければ結局、苦しい思いをしてしまう。
「今後どうするべきかを全社員と話し合った結果、お客さんが喜ぶことをしようと。これまでの仕事で、当社のどこが評価されているかと考えたら、インフラ基盤構築だった」と、小林社長は事業を方向転換した経緯を語る。06年の頃である。
リーマン・ショック時に増収
インフラ基盤構築に特化した事業戦略が功を奏し、30人ほどだった社員の数は順調に増えていった。リーマン・ショックの08年頃には、すでに100人規模になっていたという。「リーマン・ショックでは、世の中に逆行して、採用を加速させた。これが成功し、さらに社員が増えていった。もちろん、当社でも、リーマン・ショック時には受託案件が減ったものの、客先受注に方向転換したことで、インフラ基盤構築に特化したノウハウが評価されるきかっけになり、逆に増収へとつながった」と小林社長。特定分野に特化した強みがあることから、今後、くるかもしれない経済不況にも問題なく対処できると考えている。「企業は収益の約10%をITに投資している。経済不況になれば、溢れる人が出るだろうが、必要とされる人は必ずいる。システム構築の仕事はなくならない」と、小林社長は考えている。
クラウドの普及もインフラ基盤構築事業に悪影響を与えそうだが、むしろ仕事が増えているという。「クラウドでSIerが不要になると主張する人がいるけど、仕事はむしろ増えるようになる。それは単純に世の中にシステムの数が増えているから。手軽に導入できるようになっただけでなく、デジタルビジネスへと、システムが活用される範囲も広がっている」(小林社長)とし、クラウド関連の案件でもインフラ基盤構築へのニーズは変わらないとのことである。
教育事業への参入を検討
経験者採用が中心だったBFTは、13年から未経験者の採用も始めている。未経験者を採用するにあたっての課題は、現場で活躍できるようにするための教育が必要ということ。そこで小林社長は、教育プログラムの作成に取り組んでいる。「2か月でインフラSEを育てる。これを目標に独自の教育プログラムを作成した。ユーザーの情報システム部門で活用してもらったら、内容が濃いと評判がよかったため、教育サービスとして商品化する予定」。プログラミングと違い、インフラ関連は日々新しくなるため、インフラ基盤構築に特化した同社のノウハウが必要とされているのである。
「新しいテクノロジーを取り込み、以前よりも使いやすいシステムにする。これを次の世代に引き継ぎ、さらにシステムをいいものに。そのための人材を育成したい」と小林社長。教育にかける思いも熱い。