アジアビジネス探索者 増田辰弘
略歴
増田 辰弘(ますだ たつひろ)

1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。01年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。
朴槿恵大統領の職務停止、その関連でサムスンの実質トップである李在鎔副会長の取り調べなどが重なり、日本のマスコミやSNSでは、嫌韓感情からか韓国経済は絶不調、長期不況へ突入と声高にいわれるが、実際に行って調べてみるとそうでもない。
正確には財閥などの「企業経済」は厳しいが、「庶民経済」はそれほど変わりはない。このところの経済の二極化で、年収100万円でも、200万円でもそれなりに暮らせる独自の「庶民経済」をつくり上げた。このノウハウは日本人も学んだほうがよい。
例えば、事務所や夜の街でゴミが出る。そうするとゴミ置き場ごとに段ボール、ペットボトル、プラスチックと分類して持ち帰る人の集団がある。ゴミはたちどころに半分ほどになる。しかも後の処理も実に綺麗である。行政の処理費を少なくし、リサイクルと雇用が促進される。 街々の道路には靴磨きハウスがある。かなり豪華である。靴磨き料金が1500円。そんな高い料金で靴磨きをする人がいるのかとも思うが、それなりに客がいるのであろう。どこの街でも閉店した話は聞かない。韓国の街をよくみるとこんなビジネスがいたるところにある。
電車だと200円の運賃で、ソウル首都圏であればだいたいどこでもいける。駅の自動改札機は日本のように完璧ではなく、恥を忍んで底をくぐると大人でも通過できる。電車には口上つきの行商がいまだに健在である。
ホテルの朝食バイキングが1500円であった。ちょっと高いので、ホテルから20メートル位のところにある大衆食堂に行き、チゲ鍋を頼むとキムチなど4品がついて300円。24時間営業で早朝から深夜まで満席である。このように庶民経済のインフラは着々と整っている。買い物も南大門、東大門などの旧来の商店街が健在で、今回購入したマフラーが500円。これが、いわゆる安物ではなく高級品なのだ。
日本はひたすら格差のない社会を目指しているため、街角の弁当屋、白タク、民泊などのチョイ起業ビジネスに法の網は厳しい。しかし、雇用者の3分の1はパート、アルバイトの非正規社員。格差は広がりこそせよ、縮む気配はない。日本も二極化社会を前提とした「庶民経済」の構築をそろそろ考えたほうがよい気がする。
アジアビジネス探索者 増田辰弘
略歴
増田 辰弘(ますだ たつひろ)

1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。01年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。