金融領域だけでなく、汎用的な技術としてさまざまな分野で情報システムの革新に貢献する可能性が指摘されているブロックチェーン。まずは、FinTechの主役を演じることになるだろうとみる声が支配的だ。(本多和幸)
2016年の国内FinTech市場に関する調査を行った矢野経済研究所は、ブロックチェーンの活用拡大が国内FinTech市場の成長を支える大きな要因になるという見解を示した。
同社はFinTechを「ソーシャルレンディング(融資)」「クラウドファンディング」「投資・運用サービス(投資・運用、情報提供)」「ペイメント・決済」「ブロックチェーン(プラットフォーム、仮想通貨)」「企業会計(クラウド型会計ソフト、会計・経理クラウドサービス)」「家計簿・経費精算アプリ(家計簿・資産管理、経費精算)」「金融機関向けセキュリティサービス」の八つに分類。そのうえで、国内のベンチャー企業、金融機関、SIerに聞き取り調査などを行い、それぞれのFinTechへの取り組み状況や浸透度合いなどを分析した。さらに、FinTech系ベンチャー企業の売上高および売上高予測をもとに、国内FinTech市場規模の推移についても予測結果を発表した。
矢野経済研究所 「2019年度に商用事例が増加」
矢野経済研究所のレポートによれば、15年度(16年3月期)のFinTech市場規模は48億8500万円で、今後、これがかなりの急ピッチで拡大し、21年には808億円に達する見込みだという。その主要因の一つとして、「ブロックチェーンを活用した実証実験や商用事例が増えていくことが期待される」とコメントしている。また、その前提として、FinTechベンチャー、金融機関、SIerのさらなる協業強化によるオープンイノベーションの促進が必要との見解も示した。
具体的な時間軸としては、17年度、18年度で、「さまざまな実証実験を通じて導入効果が判明していくであろうことに加え、金融分野以外の領域での導入などを通じて処理性能や信頼性が向上する」と予測。こうしたプロセスを経て、「19年度には、金融分野での商用事例が増えてくることが期待される。今後は、FinTech市場の急激な伸びに貢献していくとみる」としている。
ブロックチェーンに関する直近のトピックとしては、前号でも触れたLinux Foundationの「ハイパーレジャー・プロジェクト」に言及し、「セキュリティ面や運用面などを考慮したブロックチェーンの技術開発を進めており、その動向が注目される」と指摘している。