NPO法人の日本情報技術取引所(JIET)は2月16日、沖縄支部設立式典を開催し、酒井雅美理事長が支部の設立を宣言した。支部長には、設立担当として昨年5月から設立準備に取り組んできた奥園孝二理事が就任。「ビジネスの創出と良い取引の成立を目指して」というJIETの理念のもと、年4回の商談会を通じて、沖縄県内のIT産業を盛り上げていく。また、沖縄はJIETが注力する台北やバンコクに近いことから、海外展開におけるハブとしての機能も期待される。(取材・文/畔上文昭)
早期に20社の会員を目指す
沖縄におけるJIETの活動は、これまで九州支部が担ってきた。沖縄での商談会がスタートしたのは、14年前になる。以降、ほぼ年に1回のペースで商談会を開催してきた。ただ、商談会の内容は、沖縄のSIer向けというよりも、全国の会員が沖縄にきて参加するようなイメージだった。沖縄でJIETの活動が根づくには、地域のSIerが参加するかたちが望ましい。沖縄支部の設立はJIETの悲願だったのである。
支部の設立によって、商談会を少なくとも年に4回のペースで開催することを予定している。ただ、その限りではなく、奥園支部長は「年に4回の理事会を予定している。そこでも商談会を実施したい」と意欲的だ。あわせれば、年に8回の商談会を開催できることになる。
2月16日に沖縄支部設立式典を開催。
沖縄のIT関連企業から約70人が参加した
商談会を盛り上げるには、会員の確保が重要になる。奥園支部長は、まず1年間で10社の入会を目指し、翌年には20社にしたいと考えている。「JIETのこれまでの経験から、商談会を開催するには、20社以上の会員が必要とされる。年内に10社と考えているが、早急に20社へと会員を増やしていきたい」。沖縄支部の開設時には、すでに4社が沖縄支部に入会している。また、以前から九州支部に所属している沖縄の企業が2社あり、そうした会員企業とも連携していく。
沖縄起点でオフショア開発
奥園孝二
沖縄支部支部長
沖縄支部には、海外展開におけるハブとしての機能も期待される。「日本は少子高齢化が進み、労働人口が減少していく。人手不足は、海外の人材で解消することが求められる。JIETは、そう考えて海外展開を進めている。沖縄支部には、日本とアジアの懸け橋を期待している」と酒井理事長は語る。
沖縄のSIerは、多くが東京や大阪のニアショア案件を担っている。エンジニア不足は沖縄においても深刻で、「JIETには案件獲得の期待よりも、仕事を出したいと考えているSIerが多いのではないか」と奥園支部長。
ニアショア開発を沖縄のSIerが担い、そこをハブとして、オフショア開発へと展開していく。酒井理事長が日本とアジアの懸け橋としての役割を期待するのは、そのためだ。それが機能すれば、沖縄のSIerは多くの案件をこなせることになり、企業規模を拡大させるチャンスとなる。
とはいえ、SES(System Engineering Service)を事業の柱とするSIerに会員になってもらうことで、県内で案件が回るようなかたちで商談会を盛り上げていくことも、奥園支部長は注力していく考えだ。
IT産業は観光に次ぐ規模
沖縄県では、観光産業が約6000億円規模で、県内最大となっている。それに次ぐのが、IT産業だ。市場規模は約4000億円。沖縄県が「おきなわSmart Hub構想」を打ち出して以降は、4年連続40社を超えるIT関連企業が沖縄に誕生し、雇用の受け皿になっている。
働きやすい環境を求めて、首都圏からのUターンやIターンで沖縄のSIerに就職するエンジニアも多い。JIETの会員企業においても沖縄の人気は高く、沖縄支部の設立をきっかけとして、支社の設立が検討されるようになっている。すでに進出した会員企業においては、沖縄支社への異動希望が多いとの実績があるという。
また、奥園支部長によると、「首都圏よりも女性のエンジニアが多い」とのこと。女性の活躍を推進する制度などが有効に機能しているためだと考えられる。JIETとしては、こうした沖縄の動向をモデルケースとして、全国へと発信していくことも考えている。