一般社団法人 コンピュータソフトウェア著作権協会 専務理事・事務局長 久保田 裕
略歴
久保田 裕(くぼた ゆたか)

1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
昨年末の「まとめサイト」の問題を受け、「アサヒカメラ」が2月号で「写真を無断使用する“泥棒”を追い込むための損害賠償&削除要請マニュアル」という特集を掲載して話題になった。2月号が手に入らなかった人のために、この8ページの記事は、3月号にも掲載されるという。写真家は、一瞬を切り取るためにコストと労力をかけて撮影しているにもかかわらず、ネットに掲載した途端、コピーされ勝手に流用される被害が後を絶たないらしい。
これはデジタル化されたコンテンツに共通の弱点なのだが、コンピュータソフトウェアは当初からデジタル方式で創作・流通しているため、ソフトウェア業界は海賊版の販売、流通に対する対策を継続的に行ってきた。昨今は、海賊版ソフトそのものだけでなく、例えば無償で提供されている体験版ソフトの制限を解除するツールや、製品とともに提供されるアクセスキーやシリアルナンバーがネットを通じて流通され、健全なソフトウェアビジネスを阻害する事態も発生している。
パッケージでの流通が主流で、海賊版がフロッピーディスクやCD-Rなどで頒布されていた時代と比べると、ソフトウェアのダウンロード販売やクラウド提供が増えてきた現在では、海賊版の被害やソフトウェアビジネスを阻害する情報の流通実態がみえにくくなった側面もある。そのため、ソフトウェアメーカーの経営者や幹部に自社ソフトウェアの権利保護や侵害対策を怠らないという意識が希薄になってはいないかと危惧している。私は、そもそもソフトウェアの「情報」としての価値が理解されていないのではないかと疑っている。情報の価値を知るうえでも著作権制度を理解することは必須であろう。
ソフトウェアに対する侵害には、著作権法の活用にとどまらず、商標法や不正競争防止法など、知的財産権法全般の活用も必要だ。それでも現在の法制度では対応が困難な問題については、ソフトウェアの著作権者団体として政府に意見書を提出している。「知的財産推進計画2017」の策定に際しても意見書を提出したところだ。ソフトウェア開発をはじめ、デジタルコンテンツを扱う企業には、ぜひACCSに参画して侵害対策・権利保護活動に取り組んでいただきたい。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。