前号1669号の週刊BCNでは、トップインタビュー「Key Person」のコーナーに、bitFlyerの加納裕三・代表取締役に登場してもらった。スペースの都合上、同記事内に掲載できなかった「ブロックチェーン市場」に関する加納氏のコメントを本コーナーで紹介する。(取材・文/本多和幸)
─ブロックチェーンは世の中にどんなかたちでインパクトを与えていくと思うか。例えば、大きくパブリック型とプライベート型に分けても、その特徴や用途も違うと思うが。「非中央集権」で第三者が信用を担保する必要がない世界を実現できるパブリック型こそがブロックチェーン特有の価値を提供できるという指摘もある。
加納 ビットコイン(2008年にサトシ・ナカモトを名乗る人物によってブロックチェーンを含むその原理が発表された)原理主義者は、中央集権がない世界を目指すという文脈で、ブロックチェーンの価値をパブリック型オンリーで議論しているケースもあるだろう。ただし、私もサトシ・ナカモトを尊敬はしているが技術寄りの人間なので、パブリック、プライベートという分け方でいうと両方の支持者だ。それぞれが目指すゴールも違うし、技術的特徴にも一長一短があって、どちらがすぐれているという話ではない。パブリックチェーンで非中央集権的な仕組みをつくって、打倒政府、打倒法定通貨だみたいな思想的なこだわりはなくて、技術的見地から世の中をいかに便利にできるかが一番の興味の対象だ。
まずはプライベートチェーンで技術的見地から世の中を便利に
─パブリックチェーンで経済システムそのものを変えていくというより、まずは「miyabi」のようなプライベートチェーンで既存の仕組みをもっと便利にしていきたいということか。
加納 “打倒法定通貨”が成った世界も、それはそれでみてみたい気はするが、中央発行の法定通貨を支持し続けるのか、非中央集権型の仮想通貨を支持するのかというのは、結局、それぞれの国民というか、使う人たちが、どちらにどんなメリット、デメリットがあってという議論を経て決めていくこと。来年、再来年にそういう状況になるとは考え難い。
一方で、プライベートチェーンは、もっと技術寄りの話。これによって送金システムを変革して24時間365日送金できるようになるとか、今まで高かった国際送金が安くなるとか、勘定系システムも低コストでリプレースできるとか、そういう可能性を提示できる。その意味で、まず民間で浸透していくのはプライベートチェーンといっていい。(ビットコインなどパブリックチェーンの空きスペースに付加情報を書きこむことで拡張的な機能をもたせる)カラードコインなどもあるが、その方向への進化の余地はそれほどないと思っている。