NPO法人の日本情報技術取引所(JIET)は、国内のエンジニア不足や日本の人口減などを見据え、海外展開を設立20周年の重要な取り組みとして推進している。その最初の拠点となるのが、2016年11月25日に設立したタイのバンコク支部だ。タイには製造業を中心に多くの日系企業が進出しており、現地でのITの導入や運用をサポートする日系ITベンダーも目立つ。ASEAN(東南アジア諸国連合)における経済の中心地としての発展が期待されるのも、JIET海外進出の第一歩の地に選んだ理由の一つである。(取材・文/畔上文昭)
バンコクはASEANの中心地
小暮恭一
バンコク支部長
ASEANは、域内の関税撤廃や短期滞在ビザの撤廃、出資規制緩和など、自由化による地域経済の発展を推進するAEC(ASEAN経済共同体)を15年末に発足。なかでも主要都市であるバンコクには、人やモノが集まり、経済の発展が著しい。
「ASEANは確実に成長するマーケットであることは間違いない。モノやサービスが自由化され、人が動いている。タイは、その中心となっている。タイの発展を体感した他の国の人が、地元に戻って地域の経済を動かすという循環も現実に始まっている。新しいビジネスが、ASEANにある。日本の企業は、この価値を理解すべき」と、バンコク支部の小暮恭一支部長はASEANに大きな可能性を見出している。
小暮支部長は、自身の業務で1998年にタイに進出。デザイン関連の仕事を請け負う子会社を設立した。「タイには、絵をかくのを得意とする人が多い」ため、映画やポスター、PC用学習教材の制作などを手がけてきている。また、タイには製造業を中心に多くの日本企業が進出していることから、生産管理システムなどの導入や運用なども提供している。支部長に就任した経緯は、こうした実績を買われてのことである。
現地企業の案件獲得も目指す
バンコク支部設立に向けて、JIETが準備を開始したのは15年6月。同年11月25日には、はやくも支部開設に至っている。
16年11月25日に現地で実施した「バンコク支部発足会」。
JIET海外展開の第一歩となった
会員数はまだ3社だが、発足から1年以内には10社にすることを目標として掲げている。まずは日系ITベンダーを対象とするが、いずれはタイ国内のITベンダーの入会を目指す。
「タイには多くの日系ITベンダーが進出しているものの、日系企業を主な顧客としていることから、日系企業同士のつながりが強い。一方で、日系ITベンダーはタイ国内の企業との交流が少なく、言葉の壁もある。そのため、時間をかけてタイ国内のITベンダーを勧誘していく」と小暮支部長。タイ国内のITベンダーの入会を促し、タイとの経済交流を活発にしていくことを考えている。
バンコク支部商談会は、隔月での開催を予定。また、JIETのウェブサイト上で会員向けに提供している案件・人財(人材)情報マッチング機能にタイからアクセスし、案件を請け負うことができるようにしていく。会員企業は現地で多くのエンジニアを採用しているため、タイ語のメニューを用意することも考えている。
小暮支部長はまた、「言葉の問題はあるが、コンピュータの言語は一緒。システムを構築するためのインフラも同じため、心配はしていない。バンコク支部としては、より多くの案件を獲得できるように、日本のシステム開発案件で人気の高い開発言語は何かを伝えたり、そのための教育も実施したい」と、バンコクをオフショア市場として確立し、少しでも日本の案件を受けやすい体制にすることを目指している。
そして、バンコク支部では、タイの大手企業の案件獲得も視野に入れている。「エンドユーザーを対象とする『CLUB JIET』の仕組みを、バンコク支部でも実現したい。今はオフショアが中心だが、日本経済が低迷するようであれば、逆に案件を日本にもってくることが必要になる。グローバルの流れをどのように捉えて、どのように乗っていくか。しっかりと考えなければいけない」。とはいえ、「今年は商談会を隔月で実施するが、いずれは毎月実施できるようにしたい。それだけの仕事量はあるし、今後も増えていく」とみている。なお、現在のバンコク支部は任意団体だが、年内にはNPO法人として登録することを目指している。