日本システムデザイン(梅北千広社長)は“マッチング”をキーワードに特色あるSIビジネスを展開している。人材や人脈、不動産などの最適な組み合わせを実現するシステムを独自に開発。マッチングで課題を抱える企業からの受注を増やすとともに、業務改革や営業力強化といった新規SI案件につなげた。一時期、「これといった特色がない」状態に陥っていた同社だったが、マッチングによって特色をうまく打ち出してビジネスを伸ばしている。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 日本システムデザイン
所在地 東京都
資本金 9800万円
設立 1988年1月
従業員数 約100人
事業概要 日本システムデザインは、マッチングに特化したSalesforce用の業種テンプレートがヒット商材となり、マッチングを必要とする業務領域でビジネスを伸ばしている。創業者の梅北千広社長は、日本情報サービスイノベーションパートナー協会(JASIPA)の立ち上げメンバーの一人でもある。
URL:https://www.n-sysdes.co.jp/
「越境EC」で思わぬ副次効果
水本 良取締役(左)と
鬼丸真平・執行役員クラウドサービス部部長
2018年1月で創業30周年を迎える日本システムデザインは、これまでさまざまな事業に挑戦し、その時代ごとの特色を打ち出してきた。従来型携帯電話が全盛の時代は、コイルフィルタをはじめとする電子部品の設計・開発を手がけ、多くの携帯電話に採用された実績をもつ。その後の一時期は、うまく特色を打ち出せず、総花的にSIを請け負う時期が続くものの新規事業の一環として、中国向けのネット通販事業を立ち上げ、SIとは少し違う方向性を模索していた。
中国向けネット通販は、いわゆる「越境EC」と呼ばれるジャンルで、中国の決済サービス会社や物流会社と連携し、日本の商品を中国に販売するもの。中国の市場動向は変化が激しく、越境ECを支えるバックヤードの仕組みを手組みで開発していては間に合わない。そこで採用したのが営業支援システムの「Salesforce」だった。越境ECのほうは中国側の規制強化の影響もあり伸び悩んでしまうが、Salesforceの活用ノウハウをテコに一般のユーザー企業にSalesforceの販売を始めたところ、これが予想していた以上に多くの反響を得ることになる。
Salesforceを販売しているSIerは数多くあるが、日本システムデザインではこれまで蓄積してきたマッチング業務のノウハウをSalesforceの業種テンプレートとして組み合わせることで、うまく特色を打ち出すことに成功。同社の水本良取締役は、「Salesforceをプラットフォームとしたビジネスが、15年頃から急速に伸び始めた」と話している。
Salesforceを巧みに活用する
同社がマッチングのシステムを本格的に開発したのは03年頃、建築会社向けに納めたのがきっかけだった。建物が完成して、施主に引き渡す前、施工中にできた小さな傷を修復する専門の会社が入って最後の点検を行う。このとき最適な修復会社をマッチングシステムで選び出す仕組みだ。その後、人材派遣で人材と仕事のマッチング、不動産で買い手、売り手とのマッチングなど、さまざまな案件をこなしてきた。
こうしたノウハウをSalesforceの業種テンプレート「マッチングコーディネータ」として発売したところ、「マッチングを必要とする業種・業務から引き合いが一段と増えた」(鬼丸真平・執行役員クラウドサービス部部長)と、Salesforce連携を機にビジネスが一気に拡大。並行してSalesforceの検索機能を補助する「検索クリエイター」も製品化した。昨年度(16年6月期)は、これらSalesforceに関連する製品やSIの売り上げが全体の3割余りを占めるまでに伸びている。
マッチングコーディネータでは、例えば、看護師と病院、士業と法律事務所、IT技術者と開発案件といったマッチングなど、さまざまな業種・業態で採用が進んでいる。興味深いところでは、学術界向けの商社で、論文の共著、同じ学校の先輩/後輩、学生時代の担当教授などから“学会の人脈”を可視化し、取り扱い商材とのマッチングに活用する例まである。これはマッチングだけでなく、営業支援システムとしてのSalesforceの機能も存分に生かしたもので、「Salesforceとの相乗効果」(鬼丸執行役員)をうまく引き出したケースだ。
Salesforceのプラットフォームを活用し、マッチングを軸に自らの強みや特色を上手くだすことで顧客のニーズをつかむ。さらにこの商談をきっかけに営業の効率化や顧客接点の可視化、引き継ぎ業務のシステム化など幅広い業務改善を提案。商談ボリュームを増やして売上増につなげている。