上流工程から請け負うことができる案件を首都圏で獲得し、システム開発はSIerが本社を置く地域で担う。いわゆるニアショア開発のスタイルである。長野市に本社を置くシステックスは、汎用機が中心の1970年に創業。以降、ダウンサイジングやクラウドといった時代の変化に対応しながら、ニアショア開発を続けてきている。最近では首都圏と同様にエンジニア不足が課題だが、首都圏よりも県内のほうがエンジニアを確保しやすいという。(取材・文/畔上文昭)
Company Data
会社名 システックス
所在地 長野県長野市
資本金 7500万円
設立 1970年9月
従業員数 152名
事業概要 ウェブ、クライアント/サーバー型、オフコン、汎用機等のシステムの設計・開発・販売・運用・コンサルティング。コンピュータやネットワーク関連機器の販売
URL:http://www.systex.co.jp/
県内案件は10から15%
北村正博
代表取締役社長
システックスは、「県内では一番早くソフトウェア開発を手がけた」(北村正博代表取締役社長)というほど、長野県のIT企業を代表するSIerである。当初は、汎用機のシステム開発からスタート。オフコンが普及し始めると、中規模の企業でもIT投資が進んだことから、より多くの案件を担うようになる。以降、クライアント/サーバー型システムやウェブシステム、クラウドと、時代の変化に応じてシステム開発を担ってきた。
なかでも大手企業数社の業務システムを手がけていて、継続的な開発やサポートなどが収益の柱の一つとなっている。また、金融分野や医療分野で実績があるほか、自社開発のパッケージシステムも提供している。長野本社のほか、県内に松本支社、県外に東京支社と名古屋支社を置いている。支社は案件の獲得や上流工程を担当し、システム開発は長野本社というのが、同社の基本スタンスである。首都圏の案件が多いことから、エンジニアを首都圏で確保して、現地でシステム開発を手がけることも考えられるが、それでは長野県に本社を置く意味がない。「県内案件は10から15%くらいで、決して比率は高くないが、県内に本社があるために信頼していただき、獲得できている面もある。また、県内のSIerとして、県内のニーズにしっかり応えていきたい」と、北村社長は長野に本社を置くことにこだわっている。
社員のほとんどが県内出身者
システム開発を本社で行っていることもあり、エンジニアのほとんどが県内出身者となっている。地元の雇用を支えるという面もあるが、エンジニアの確保において県内出身者の採用にメリットがあるという。「エンジニア不足が何かと問題になっているが、それは当社も同じ。ただ、首都圏より、長野のほうがエンジニアを確保しやすい。また、まじめで素直な県民性もシステム開発に向いている」と、北村社長は語る。
エンジニアの育成にも力を入れていて、最新テクノロジーの習得に加え、顧客とのコミュニケーション能力の向上にも注力している。「資格試験に加え、顧客対応など、現場での対応もあわせて社員を評価している。また、最近は働き方改革が話題となっているが、単純に労働時間を短縮するだけでなく、短い時間でいかに成果を残すかに取り組んでいきたい」(北村社長)。
今後はデータ分析に注力
案件過多の状況が続くSI業界だが、この先も続くのかどうか。北村社長はSI業界の今後を次のように考えている。
「どこの会社もIT投資が飛躍的に伸びるとは考えていないが、大きく減ることもないと思う。仕事があるかどうかでいえば、あまり心配はしていない。とはいえ、テクノロジーは常に変化するため、そのキャッチアップという意味で、将来不安がある。乗り遅れることがないように、社員の教育には今後も投資していくし、新しい分野の事業にも積極的にチャレンジしていく」。そのためには、むやみに企業規模を拡大させず、少数精鋭で小回りの利く経営を続けていくとしている。
AIやIoTといった新しい分野については、「実績のあるデータ分析を起点に取り組んでいく。そこをしっかり固めれば、あえてAIやIoTを目指さなくても対応できる」とのこと。健保関連でビッグデータを活用した分析関連の案件などで実績があるため、AIやIoTを掲げず、データ分析を起点に事業を展開していく考えだ。