既存ビジネスモデルの破壊か、進化か? ブロックチェーンの革新
<既存ビジネスモデルの破壊か、進化か? ブロックチェーンの革新>(60)日銀と欧州中央銀行が共同調査結果を公表(2)
2017/10/11 09:00
週刊BCN 2017年10月02日vol.1696掲載
日本銀行と欧州中央銀行は今年9月、「金融市場インフラへの分散型台帳技術(DLT)の応用可能性調査」共同プロジェクトの第一弾報告書を発表した。前号に引き続き、その内容をみていく。(取材・文/本多和幸)
今回採用されたDLTは、Linux Foundationのハイパーレジャー・プロジェクト傘下でIBMが開発を主導している「ハイパーレジャー・ファブリック」の前バージョン(0.6.1)だ。実験では、DLT上に2種類のスマートコントラクト(取引ルールを規定し処理を自動化する仕組み)を作成した。RTGSシステムの流動性節約機能を実行するスマートコントラクトと、待ち行列への待機や同時決済を行わずに取引指図の振り替えのみを単純に実行するスマートコントラクトを作成し、両者を比較したかたちだ。
実験結果の詳細について一例を紹介すると、流動性節約機能を実行しない単純なスマートコントラクトの場合、取引検証に携わるノード数と処理時間はトレードオフの関係にあり、ノード数が増えるほど取引指図が処理されブロック上にデータが記録されるまでの時間が長くなることは、二つのスマートコントラクトで共通して確認されたという。一方で、流動性節約機能を実装していても、していなくても、処理時間の差は0.01~0.02秒にとどまったことから、流動性節約機能の実装が、システムとしてのパフォーマンスにはそれほど大きく影響しないこともわかったとしている。
現行の大口資金決済システムと
ほぼ同等のパフォーマンス
結果として、今回の実験では、「効率性の面についていえば、RTGSサービスのうち実験の対象となった部分については、DLTによって、現行の大口資金決済システムが求めるパフォーマンスとほぼ同等の水準を満たす可能性があることがわかった」と結論づけている。日銀ネット、TARGET2ともに、平時のみならず、ピーク時と同等のトラフィック量の取引指図も遅滞なく処理を行うことができたという結果になった。
さらに報告書では、DLTのシステムを設計する際に、ノードの数に加えて、ノード間の距離を拡大した場合も処理時間の増大がみられたと指摘している。DLTを活用したシステムでは、ネットワークの構造とパフォーマンスが密接に関係していることが確認できたことも、今回の調査の収穫だったという。
また両者は、耐障害性や信頼性の観点でも、DLTのポテンシャルを提示することができたとみているようだ。例えば、検証ノードに障害が起こった場合、それにより機能を停止していた時間の長さに関係なく、復旧時は短時間でリカバリできる可能性が確認できたとしている。また、誤ったフォーマットで記載された取引指図についても、スマートコントラクトで検知して排除することが可能であり、DLTシステム全体の耐障害性への影響はなかったことを報告書中で説明している。
日本銀行と欧州中央銀行は今年9月、「金融市場インフラへの分散型台帳技術(DLT)の応用可能性調査」共同プロジェクトの第一弾報告書を発表した。前号に引き続き、その内容をみていく。(取材・文/本多和幸)
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