事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)

1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。
AR(拡張現実)がおもしろくなってきた。Appleの「ARkit」、Googleの「ARcore」の登場によって、大きく発展しようとしている。以前からARという言葉はあったが、何が違うのか。これまでのARはスマートフォン越しにARマーカなるQRコードのようなものを読み込むと、そこに3D描画された物体が現れるというもの。ARコードを印刷する必要があり、面倒だった。ところが、現在のARサービスは空間認識機能が搭載され、映り込んだ環境に最適な表示ができるようになった。机の上にARで表示したボールがあるとする。これまでのARは単にカメラ画像に合成したに過ぎなかったが、空間認識機能が搭載されると、カメラに映った環境をセンシングしているため机を傾けるとAR表示された架空のボールは傾きに応じて転がっていく。家具の配置シミュレーションではサイズも図ることができるし、正確に設置後の様子をシミュレーションできる。また、Pokemon Goではピカチューが段差でつまずく表現も可能となるのだ。
先日、SnapchatがアーティストJeff Koonsとのコラボレーションで、ARアートを展示する新しい機能の提供を開始した。ジオタグを付けられた世界中の物理的な場所に、アーティストたちによるデジタルアートワークを貼り付け、Snapchatアプリ内から見ることができるというものだ。これは単にARアプリをSnapchatがつくったということではない。まったく新しい表現のレイヤをつくりあげたということだ。日比谷公園のステージに特定の時間だけ3Dコンテンツを表示したり、場所と時間を指定して現実の空間にまるで新しいレイヤをかぶせるように重ねあわせることができる。これまでも似たようなことはできたのだが、光の加減までバーチャルな物体が影響を受けて変化、よりリアルな表現が可能になってきており、非日常な体験は徐々に普通の未来へと融合してゆくこととなるだろう。これは単なるゲームや写真の話をしているのではない。スマートフォンの次がなんでVR・MRといわれるのか。その未来をこの先に垣間見ることが重要だ。
空間センシング機能に3Dコンテンツの正確なマッピング、この技術が一般化した時、どんなコンテンツが生まれ、そしてシェアされていくのか、早くその未来に気づいておく必要がある。
事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)

1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。