「手組みのスクラッチ開発」や「パッケージソフトの独自開発」「客先常駐型の請け負い開発」などの開発形態は、それぞれ一長一短ある。メタリテール・コンサルティングは、これら多様な開発形態のどれかに偏ることなく、バランスよく取り組んでいる。「それぞれの形態で得られるノウハウが異なる」(同社の柿本幸治代表取締役)と、開発形態の特性を踏まえたうえで、そのなかからできる限り自社にとって有益なノウハウや技術を取り込むことで成長につなげている。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 メタリテール・コンサルティング
所在地 東京都新宿区
資本金 1000万円
設立 2006年
社員数 15人
事業概要 メガネ業界向けの顧客管理・販売管理のパッケージソフトや、ワクチン作成・細胞加工といったバイオ作業を支援するシステム開発で実績多数。新規性の高いスクラッチ開発も得意とする
URL:http://www.meta-retail.com/
スクラッチ開発から
業務パッケージへ
柿本幸治
代表取締役
SIerが他社と差異化したり、競争優位性を高める手法の一つが、自社の独自の業務パッケージソフトをもつことだ。だが、いきなり独自の業務パッケージをつくれるわけでなく、そこには「手組みのスクラッチ開発」の経験やノウハウが生かされていることが多い。メタリテール・コンサルティングも、スクラッチ開発の経験やそこで得た知見、ノウハウを集約するかたちでパッケージソフトを開発してきた。
例えば、同社独自のメガネ小売店向け顧客管理・販売管理システム「Syglass(シグラス)」や、細胞や細菌などの調査研究やワクチンの作成を管理するバイオ作業支援システム「CellMax2(セルマックス2)」。いずれも同社が長年にわたって携わってきたメガネ業界やバイオ業界での経験や知見をもとにパッケージ化した製品群である。
顧客が新しいことに挑戦しようとするとき、新規性が高ければ高いほど、既存の業務パッケージでは合わない割合が高まる。そうしたケースでは手組みでゼロからつくる他ない。そして、顧客がやりたいことをよく聞き込んで開発した経験やノウハウを生かしてパッケージをつくれば、自ずと他社に先んじてのパッケージ化につながるというわけだ。
とはいえ、新規性が高いスクラッチ開発は、顧客自身やSIerともに“理想の完成像”がしっかりイメージできていないケースが多く、いわゆる不採算プロジェクトに陥るリスクも高まりやすい。「いくらていねいに要件定義を行っても、途中での手直しは必ず発生するし、むしろ気づいた時点で修正をかけていったほうが使い勝手がよくなる」(柿本代表取締役)と、事前に顧客の理解を取りつける。修正にかかった費用の内訳をしっかり開示し、予算を確保してもらい、顧客が思い描くシステムに限りなく近づけていく。顧客の満足度が高まれば、リスク低減にもつながると考えている。
客先常駐からも
最新の開発手法を学ぶ
メタリテール・コンサルティングは、旧エルム(のちの旧ウッドランド、現フューチャーグループのFutureOne)から独立した会社で、インターネットを駆使した新しいシステム開発を得意としてきた。先述のメガネ小売店向け顧客・販売管理パッケージも、もとをたどればメガネメーカーの電子カタログの制作からスタート。ネットが業務に本格的に使われ始めた2000年頃、これまでの紙のカタログを電子化して、在庫の有無もネット上ですぐに確認できるようにした。これがきっかけでメガネ業界の知見や業務ノウハウを獲得。メガネ小売店向けの独自の業務パッケージ「Syglass」の開発につなげている。
常に先進的な領域に挑戦してきた同社だが、実は先進的な開発とは距離がありそうに思える「客先常駐型の請け負い開発」も手がけている。客先常駐は、文字通り客先に常駐して、開発を請け負う形態。多くは顧客のシステム部門や同業他社との一緒に開発し、その一部分を担う。このため得られる業種・業務的なノウハウは限定的だといわれている。それでも、あえて客先常駐を手がける理由は、「先進的な開発手法であったり、昨今の開発のトレンドを知るうえで役に立つから」だと柿本代表取締役は話す。
社内だけで開発を手がけていると、どうしても長年馴じんできた開発手法に偏重する傾向が出てきてしまう。新しい領域に進出するには、まずは時代の潮流に合った開発手法が欠かせない。客先常駐でも先進的な手法を採り入れている現場を優先的に受注すれば、「学ぶべきところは多い」。さまざまな開発形態から貪欲に学ぶ姿勢を貫くことで競争優位性を高めている。