SEにはかつて、35歳定年説があった。技術の進歩が速いITの世界についていけるのは、35歳までといったことを意味していた。ITの進歩は今も相変わらずだが、多くのSEは35歳を過ぎても現場で活躍している。35歳定年説は、もはや死語となっている。とはいえ、IT企業が求めているのは、若手エンジニア。35歳ならともかく、50歳を超えると容易には転職できない。ところがスターシステムは、永年勤続制度を用意し、中途採用も年齢に関係なく実施している。エンジニア不足といわれるIT業界だが、同社はそれをまったく感じないという。(取材・文/畔上文昭)
Company Data
会社名 スターシステム
所在地 愛知県名古屋市
資本金 2500万円
設立 2005年5月
社員数 160人
事業概要 業務システム開発、制御・機械設計、ソフトウェア開発支援、技術者の特定派遣、評価・開発サポート等の常駐、コンサルティング、起業支援、ホームページ製作
URL:http://www.star-system.jp/
OAとFAをつなぐ
稲葉弘承
代表取締役
スターシステムの設立は、2005年5月。設立1年目は、稲葉弘承代表取締役の一人会社。開発案件を受注し、システム開発会社に流していた。とにかく案件受注に注力したため、不採算案件も多かったという。
2年目にOA系とFA系のエンジニアが合流。OA系は、一般的な業務システムの開発。FA系は、製造業向け機械の制御ソフトウェア開発である。そのOA系システム開発とFA系システム開発が、同社における現在の事業の柱となっている。
「当社の強みは、OA系とFA系という両方のスペシャリストがいること。OAとFAをつなぐというIoTのニーズにワンストップで対応できる」と、稲葉代表取締役は説明する。現在でいうところのIoTである。多くのSIerは、OAとFAをつなぐノウハウをもっていないうえ、IoTがトレンドとなったこともあり、同社に追い風が吹いている。
「機械は体の革命だったが、IoTは頭の革命、知性の革命。IoTでさまざまなことが大きく変わる。これはビジネスチャンスとなる」。IoTの導入は大企業を中心に進んだが、スターシステムでは中小企業でも導入できるように、20万円以下のパッケージ開発に取り組んでいる。まずは安価なパッケージで効果を実感してもらい、大規模な案件へとつなげていくことを考えている。
採用は「人格」を重視
スターシステムは社員数が160人を超え、中国にシステム開発子会社をもつなど、急成長を続けている。OA系とFA系に強みをもっているのが最大の要因だが、それだけでは急成長はできない。ポイントは、人材の採用。スターシステムは年齢や経験に関係なく、人材を採用しているのである。
「40歳と65歳で体力はあまり変わらない。記憶力でも大きな差はない。以前は30代を中心に採用していたが、現在ではどんどん上げている。ベテランのエンジニアは、必ず“武功”をもっている。豊富な経験がある。多くのSIerは年齢を理由に採用していないため、エンジニア不足に悩んでいるが、当社は違う。エンジニア不足だとは、まったく感じない」。最高齢の採用は69歳だと、稲葉代表取締役は誇らしげに説明する。同社には定年制度がなく、69歳で採用し、70代になったエンジニアは現在も活躍しているという。
「採用のポイントは、主体性があるかどうか。経験や年齢ではなく、人をみている。多くの企業は“優秀な人”の定義が間違っている」と稲葉代表取締役。採用は今後も積極的に実施していく予定で、社員400人規模の会社にすることを目指している。社員は多いほうが高い質の仕事を確保できるというのが、稲葉代表取締役の採用方針の根底にある。
自動的に元請けに向かう
創業時からSES(System Engineering Service)やエンジニア派遣に取り組んできたスターシステムだが、今後はとくに意識しなくても元請けとなる受託開発に向かっていくとしている。
「元請けかどうかは、プロセスに過ぎない。ただ、技術力が評価されるようになると、ユーザー企業から声がかかるようになる。そのために、人材の育成に注力している。意識しなくても、元請けへと事業が変わっていく。ただ、社員の給料を上げるには、商流を上げていかなければならない。その点では、元請けを志向する必要がある」。一方で、SESはSEのノウハウを磨くのに利用できるとも。スターシステムでは「大手SIerの大規模なプロジェクトの経験は、一生役に立つ」との考えから、大手SIerのSESに注力している。いずれにせよ、人間力重視の経営で会社を成長させていく考えだ。